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方程S価格18.99万元から900km航続のBYD新型セダン

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方程S価格18.99万元から900km航続のBYD新型セダン

方程Sは、BYD系の方程豹(Fang Cheng Bao)が2026年9月16日に中国で発売した電動セダンで、価格は18.99万元から、CLTC航続は最大900kmに達する。

猎装(シューティングブレーク)版の「方程S GT」も同時発売され、価格帯とボディ形状の異なる合計9グレード構成になった。最大の訴求点は800V急速充電の「閃充」と、量産20万元級の中国車としては世界初とされる磁流変(じりゅうへん)サスペンション「云辇-M」だ。中国の20万元級電動セダン市場は小米(Xiaomi)SU7や極氪(Zeekr)001がひしめく激戦区で、方程Sはこの価格帯に正面から挑む一台になる。

方程S、9月16日発売で納車開始

方程豹ブランドは2023年8月にBYDが発表した個性化ブランドで、第1弾SUV「豹5」は同年11月に発売された。その後「豹8」、2025年には「钛3(Tai 3)」と車種を広げ、2025年通期の販売は18万台超、前年比で308.6%増という急拡大を見せている。セダン系の「方程」シリーズはこの流れの延長線上にある。

方程S・方程S GT・大型三厢の「方程SL」(未発売)の3形態は、2026年4月24日の北京モーターショーで初公開された。実際の発売までは5ヵ月。6月10〜11日に型式申請(公告)を通過し、8月20〜21日に予約を開始、9月16日に正式発売、9月28日には最初の納車が始まっている。企画発表から納車までのこのスピードは、BYDグループ内でプラットフォームや電池、半導体を共通化している強みが出ている部分だ。

全9グレードの価格とスペック

方程S価格18.99万元から900km航続のBYD新型セダン
出典: CnEVPost

方程Sの価格帯は18.99万元(1元=約23.5円(2026年10月時点)で換算すると約446万円)から23.99万元まで。三厢(ファストバック)の方程S本体が5グレード、猎装の方程S GTが4グレードという構成だ。エントリーの「730km後輪駆動」は76.744kWhのブレードバッテリーを積み、CLTC航続は730km。上位の「900km後輪駆動」は92.093kWhの電池を積み、CLTC航続は900kmまで伸びる。四輪駆動グレードは合計490kW(666馬力)を発生し、0-100km/h加速は3.6秒とスポーツセダン並みだ。

サスペンションは「云辇-C」「云辇-A」「云辇-M」の3段階が用意され、同じ航続・出力のグレードでもサス違いで価格が変わる構成になっている。詳しい内訳は下記の表の通り。

グレード 価格 CLTC航続 出力 0-100km/h サス
730km後輪駆動 18.99万元 730km 245kW 5.8秒 云辇-C
900km後輪駆動-A 20.99万元 900km 300kW 5.8秒 云辇-A
900km後輪駆動-M 20.99万元 900km 300kW 5.8秒 云辇-M
750km四輪駆動-A 22.99万元 750km 490kW 3.6秒 云辇-A
750km四輪駆動-M 22.99万元 750km 490kW 3.6秒 云辇-M
900km後輪駆動-A(GT) 21.99万元 900km 300kW 5.8秒 云辇-A
900km後輪駆動-M(GT) 21.99万元 900km 300kW 5.8秒 云辇-M
750km四輪駆動-A(GT) 23.99万元 750km 490kW 3.6秒 云辇-A
750km四輪駆動-M(GT) 23.99万元 750km 490kW 3.6秒 云辇-M

これで三厢5グレード・猎装4グレードを合わせた9グレードの全体像が揃う。GT版は航続900km以上のグレードから用意され、エントリーの「730km後輪駆動」に相当するGT版は存在しない。動力系(電池・出力)は三厢と共通とみられ、同じ航続・出力帯で比べるとGT版は1万元(約24万円)ほど高い価格設定になっている。この上乗せ分が猎装ボディのプレミアムという計算だ。

猎装の方程S GTは全長5,025mm・全高1,458mmで、三厢の方程S(全長5,060mm・全高1,483mm)よりやや低く構える。ホイールベースは共通の2,960mm。価格は21.99万元(後輪駆動)〜23.99万元(四輪駆動)で、三厢より一段高い。荷室の使い勝手を取るか、空力性能(方程Sの風阻係数Cd=0.22は複数ソースで一致)を取るかで選ぶ形だ。なお方程S GTのCd値は情報源によって0.21と0.25の両方が見られ、現時点でどちらが正確か確定できていない。

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云辇-M磁流变サスの仕组み

云辇-M最大の特徴は「磁流变(MR)ダンパー」だ。仕組みを分解すると分かりやすい。ダンパー内部には鉄粉を混ぜた特殊な油(MR流体)が入っていて、コイルに電流を流すと磁場が発生し、油の中の鉄粉が一瞬で鎖状に並ぶ。これにより油の粘度(硬さ)が変わり、ピストンの動きにブレーキをかける強さを電気的に調整できる。路面の凹凸をセンサーが検知し、コンピューターが1ミリ秒単位で磁場の強さを変えることで、1秒間に最大1,000回、減衰力を100N〜10,000Nの範囲で可変にする。

この技術自体は新しくない。フェラーリ296 GTBなど数千万円級のスーパーカーで使われてきた仕組みで、BYDはこれを磁流变液の配合からダンパー構造、制御アルゴリズム、車両のチューニングまで自社で一括開発したとしている。これが事実なら、20万元級(日本円で400万円台)の量産車に搭載するのは業界初だ。ただし「フェラーリと同根の技術」という表現はBYD側・中国メディアの宣伝文脈で使われているもので、フェラーリ側が技術供与や技術の同一性を公式に認めた一次情報は確認できていない。読み物として面白い話ではあるが、裏取りが取れていない部分として扱うべきだ。

磁流変ダンパーは、実はフェラーリのような超高級車専用の技術ではない。元祖はGM(ゼネラルモーターズ)が2002年にキャデラックへ搭載した「マグネライド」で、その後シボレー・コルベットなど比較的量産規模の大きい車種にも展開されてきた実績がある。つまり「磁流変=スーパーカー専用技術」という捉え方はやや単純化が過ぎ、量産適用のハードルはコスト次第で下げられる技術だったとも言える。BYDの新しさは、磁流変液の配合からアルゴリズムまでを自社で垂直統合し、20万元級という価格帯まで一気に引き下げてきた点にある。

天神之眼Bの性能とは

方程Sが搭載する運転支援システムは「天神之眼B」。BYDの運転支援は天神之眼A・B・Cの3階層構造になっていて、ランクで積んでいるセンサーと頭脳が丸ごと変わる。最上位の天神之眼A(DiPilot 600、仰望ブランド向け)はLiDAR(レーザー光で周囲の距離を測るセンサー)を3基、車載AIチップ「Orin-X」を2基搭載し、演算性能は508TOPS。TOPSとは「1秒間に何兆回の演算ができるか」を示す単位で、数字が大きいほど周囲の映像やセンサー情報をより速く・多く処理できる。

方程Sの天神之眼B(DiPilot 300)は、LiDAR1基・ミリ波レーダー5基・カメラ12基という構成で、Orin-Xを1基だけ使い、演算性能は254TOPS。最上位の天神之眼Aの約半分の演算力だ。これで高速道路でのナビ運転支援(NOA)、市街地でのナビ運転支援、自動駐車に対応する。最下位の天神之眼C(DiPilot 100)はLiDARを持たないカメラのみの構成で、価格を抑えたグレード向けだ。方程Sが中位グレードのBを選んだのは、価格競争力と機能のバランスを取った結果と見てよい。

ランク 名称 LiDAR チップ 演算性能
天神之眼A DiPilot 600 3基 Orin-X×2 508TOPS
天神之眼B DiPilot 300(方程S) 1基 Orin-X×1 254TOPS
天神之眼C DiPilot 100 なし 非公表 非公表

NOA(ナビゲーション運転支援)は、目的地までのルートに沿って、高速道路の入口から出口まで車線変更・追い越し・ランプ合流などを自動で支援する機能を指す。NIOの「NOP+」やXpengの「NGP」など、中国メーカー各社がしのぎを削る分野で、呼び名は違っても機能の方向性は近い。方程Sの天神之眼Bがこのクラスに対応したことで、価格帯の割に運転支援の「数字上の見劣り」は少ない仕上がりになっている。ただし演算性能(TOPS)が高いほど実際の走行の滑らかさや対応シーンの広さに直結するとは限らず、ソフトウェアの最適化次第で体感差は大きく変わる点は留意したい。

小米SU7との価格比較

方程S価格18.99万元から900km航続のBYD新型セダン
出典: CarNewsChina

方程Sが戦う20万元級の電動セダン市場は、中国でもっとも競争が激しい価格帯のひとつだ。報道によれば、方程Sの「900km後輪駆動」(20.99万元)は小米SU7(航続902km仕様)より約2.6万元安く、極氪001より約7.9万元安いとされている。この差額は報道時点の両車の価格との比較であり、競合側が値下げや仕様変更をすれば差は縮まったり広がったりする点は注意したい。

本文の価格差から逆算すると、小米SU7(同航続仕様)は約23.59万元、极氪001は約28.89万元という水準になる。1元=約23.5円(2026年10月時点)で換算すると、方程Sの「900km後輪駆動」は約493万円、小米SU7は約554万円、极氪001は約679万円という計算だ。いずれも本文の価格差から導いた単純換算であり、各社が値下げや仕様変更をすれば数字は変動する。

方程Sが対抗できる武器は2つ。ひとつは800V高電圧の「閃充」で、公式発表値は「10%→70%充電を5分」「10%→97%充電を9分」。小米SU7も急速充電は速いが、方程Sはここを前面に押し出す戦い方をしている。もうひとつは云辇-Mサスペンションで、同価格帯のライバルにはまだ用意されていない差別化要素だ。なお方程S GTのような猎装ボディは、この価格帯で競合がほとんどなく、実質的に独占状態にある。

方程豹ブランドの急成長

方程豹は2023年8月の立ち上げからわずか2年強で、年間販売18万台超・前年比308.6%増という成長曲線を描いている。第1弾の「豹5」は累計10万台を突破した。BYDが個性化ブランドを増やす狙いは明確で、1台数百万円のBYDブランドだけでは取りこぼす「個性がほしい層」「走りを求める層」を、方程豹・海洋網・王朝網といった複数ブランドで細かく拾う戦略だ。方程Sはそのセダン版の第一弾という位置づけになる。

車種別の立ち位置を整理すると、硬派なクロスカントリーSUVの「豹5」がブランドの世界観を確立した創業モデルで、よりラグジュアリー志向の大型SUV「豹8」が上級ラインを担い、2025年投入のレンジエクステンダーSUV「钛3」が価格を抑えた入門モデルとして台数を積み上げる、という3層構造になっている。方程SはこのSUV主体のラインナップに初めて加わるセダンで、方程豹ブランドが「オフロード専業」から「電動パフォーマンス全般」へ領域を広げる最初の一台とも言える。

この強みは日本の読者にも参考になる。日本市場で展開されているBYDブランド(ドルフィン、ATTO3、シールなど)は、中国国内で展開しているブランド群の一部でしかない。BYD全体の新車戦略を理解するには、中国EVメーカー一覧で各ブランドの立ち位置を把握しておくと、方程豹のような新興ブランドの動きも読みやすくなる。

BLADE NOTEの見立て

方程Sでいちばん気になるのは、技術の濃さと市場の狭さのギャップだ。254TOPSの天神之眼B、業界初クラスの云辇-M、800V閃充。スペック表だけ見れば「BYDの本気度」が伝わってくる一台だが、これが日本に来る可能性は現時点でかなり低いと見ている。

理由は3つある。まず、BYD Japanの販売網は2026年9月時点で77拠点(営業中59)。2025年末に掲げた「100拠点」目標すら未達の状態で、既存のドルフィン・ATTO3・シール・シールライオン7・シールライオン6・Raccoの6モデルを売り切る体制づくりが最優先だ。方程豹という新ブランドを立ち上げる余力は、今の販売体制には見えない。次に、BYDの乗用車(登録車)の日本累計販売は2023〜2025年上半期で約5,300台にとどまる。方程豹のような個性化ブランドは中国国内の価格競争・ブランド細分化戦略に最適化されたモデルで、保安基準対応や右ハンドル化のコストに対して日本市場の規模が小さすぎる。最後に、方程Sが戦っている18.99万〜23.99万元という価格帯は日本円換算で約446万〜564万円。これは充電インフラの整備状況も踏まえると、日本でBYD SEALやSEALION 7が狙う価格帯と重なり、社内競合を起こしかねない。

一方で、云辇-Mのような足回り技術は無視できない。バッテリー技術ガイドで触れているように、BYDは電池と同じく足回りの基礎技術を自社で垂直統合する戦略を一貫して取っている。云辇-Mが量産を重ねてコストダウンすれば、次世代のSEALやATTOにグレードダウン版が降りてくる可能性はある。方程S自体が日本に来るかより、この技術がいつ日本仕様車に「移植」されるかを見ておくほうが、実利のある注目点だと考えている。

出典

2026年10月24日: 人民元の円換算レートを1元=約23.5円(2026年10月時点)に統一し、換算額を更新しました。

BLADE NOTE編集部

BYD・中国EVの価格・補助金・販売店の情報を、メーカー発表や官公庁資料などの一次情報をもとに日本語で整理しています。記事作成には AI を活用し、数値と事実関係は編集部が一次資料で確認しています(編集方針)。