Geely Galaxy Starship 7 – 宋PRO対抗PHEVの価格NEW
吉利銀河「星艦7(Starship 7)」は、BYD宋PRO DM-iを標的にした中国市場向けPHEV SUVで、2026年モデルの価格は10.18万〜12.98万元。
2025年11月19日、吉利の新エネルギー専業ブランド「Galaxy(銀河)」は、SUV「星艦7(Starship 7)」の2026年モデルを発表した。4グレード構成で正規ガイド価格は10.18万元・11.28万元・12.18万元・12.98万元。実勢の値引き後価格は9.58万〜12.38万元(約13,400〜17,300米ドル)に設定されている。2026年9月23日時点のCNY/JPYレート(1元≈23.5円)で単純換算すると、およそ225万〜291万円相当という水準になる。これはあくまで為替換算の参考値であり、日本での実売価格を示すものではない点は強調しておきたい。
何が起きたのか—BYD宋PRO DM-iを名指しした対抗車
星艦7は2024年12月6日、PHEV版「EM-i」として先行発売された。当時は5グレード構成で、限定価格は9.98万〜13.28万元だった(搜狐汽車)。約1年後の2025年11月、価格帯をほぼ据え置いたまま航続距離・出力・燃費を底上げした2026年モデルへと刷新した形だ。中国のPHEV SUV市場では「10万元級」が最量販ゾーンであり、そこでBYD宋PRO DM-iが長らく首位を占めてきた。星艦7はサイズ・熱効率の両面で宋PROを上回る数値を掲げ、正面から挑む設計になっている(CnEVPost)。
吉利のGalaxyブランドは2023年に立ち上げられたばかりの新興ラインだが、わずか2年で「10万元級PHEV SUV」という中国最大の激戦区に本格参入した点が興味深い。グレード間の違いも実用的だ。最廉価の10.18万元グレードは電動航続55kmのエントリー仕様だが、最上位の12.98万元グレードでは電動航続200kmのロングレンジバッテリーに加え、パノラマサンルーフや高度運転支援(ADAS)機能が標準化される。つまり同じ車名でも実質的には「街乗り特化モデル」と「ロングドライブ対応モデル」の2系統が混在しており、宋PRO DM-iのグレード構成と比較検討する際はこの点に注意が必要だ。
なお輸出市場では車名が変わる。多くの国で「EX5 EM-i」、南アフリカでは「E5 EM-i」、オーストラリア・インドネシア・スペインでは「Starray EM-i」、マレーシアでは提携先プロトンの「Proton eMas 7 PHEV」として売られている。似た名前の「Galaxy Starshine 7」はセダンで全くの別車種なので混同しないよう注意したい。
雷神EM-iの仕組みを分解する—「超級電混」とは何か

星艦7 EM-iの心臓部は、吉利が「雷神(NordThor)EM-i」と呼ぶハイブリッドシステムだ。1.5L直列4気筒エンジン(出力82kW)に、E-DHT 11-in-1電動駆動ユニットを組み合わせる。E-DHTとは、モーター・減速機・インバーターなど本来バラバラの部品を1つの筐体に統合した駆動ユニットのことで、部品点数を減らして軽量化と伝達効率の向上を狙う設計思想だ。2026年モデルではモーター出力を160kWから175kWへ引き上げている。
構造的にはBYDのDM-i(第5世代)と同様、低速域はモーター駆動を主体にしエンジンは発電機として働かせ、高速巡航域でのみエンジンとタイヤを直結するクラッチを結合する「シリーズ・パラレル可変機構」を採用する。吉利側の設計上の主張は、クラッチの締結ロジックをより細かく制御することで、市街地から高速道路までの速度域でエンジン直結クラッチを使う比率を高め、電力変換ロスを減らしている、というものだ。この方式自体はDM-iと概念的に大きく変わらないが、E-DHTユニットの統合度と制御ソフトの世代が新しい分、燃費・加速性能の両立を主張しやすい立場にある。
SiCとエンジン熱効率46.5%の意味
駆動系にはSiC(炭化ケイ素)製の可変圧モジュールを搭載する。SiCは従来のシリコン半導体より高温・高電圧に強く、電力変換時の損失(熱として逃げるロス)を抑えられる素材だ。これによりモーター駆動時の電費が改善する。エンジン側の熱効率46.5%という数値も重要だ。熱効率とは、ガソリンの燃焼エネルギーのうち実際に走行に使われる割合を指し、一般的なガソリンエンジンは30〜35%程度にとどまる。46.5%はメーカー公称値であり独立検証機関による追認は確認できないが、BYD宋PRO(第5世代DM、46.06%)とほぼ同水準かわずかに上回る主張になっている。両社とも熱効率46%台という「限界に近い数値」を掲げている背景には、中国メーカー間で熱効率競争がすでに小数点以下の攻防に入っていることがある。
数字で見る宋PROとの差—車格・電費・航続
バッテリーはLFP(リン酸鉄リチウム)の「神盾短刀電池」で、8.5kWh(CLTC純電動55km)から29.8kWh(同200km)まで4種類を用意する。2026年モデルでは中間グレードの航続を19.09kWhの120kmから130〜135kmへ拡大した。DC急速充電は最大36kWで、PHEVとしては標準的な水準だ。燃費はCLTC基準(中国の型式認証サイクルで、日本のWLTCとは前提条件が異なる点に注意)で低電量時3.15L/100km、満タン+満充電の合計航続は最大1,575kmに達する。
車格でも星艦7がわずかに上回る。全長は両車ともほぼ同じだが、全幅・ホイールベースで星艦7が優位に立つ。全幅が45mm広い分、後席の肩まわりや荷室幅に余裕が出やすく、ホイールベースの43mm差は後席レッグルームに直結する。中国のPHEV SUVユーザーが重視する「ファミリーユース時の室内広さ」という観点では、数値上は星艦7がやや有利な設計と言える。詳しいサイズ・価格の横並び比較はBYD全車種比較のハブ記事でも扱っているので、購入検討時の参考にしてほしい。
| 項目 | Starship 7 EM-i(2026) | BYD宋PRO DM-i |
|---|---|---|
| 価格帯(元) | 9.58万〜12.38万(実勢) | 非公表(本記事執筆時点で直接比較なし) |
| 全長×全幅×全高 | 4,740〜4,750×1,905×1,685mm | 4,735×1,860×1,710mm |
| ホイールベース | 2,755mm | 2,712mm |
| エンジン熱効率 | 46.5%(メーカー公称) | 46.06%(メーカー公称) |
| 0-100km/h | 7.5秒 | — |
独立検証とギネス世界記録が示す実燃費
メーカー公称値だけでなく、第三者による検証データも押さえておきたい。旧モデル(公称3.75L/100km)を対象にした専門メディアの実走行テストでは、3.2L/100km前後を記録したとの報告がある。さらに2025年12月9〜10日、星艦7はシドニー〜メルボルン間の沿岸ルート1,056kmを走行し、量産PHEV SUVとして最も低い燃費(3.83L/100km)を記録したとしてギネス世界記録に認定された。走行はプロドライバーが複数名で交代しながら実施され、一般道と高速道路が混在する実際の道路状況を再現したルート設定になっている。これはメーカー主催のイベントではあるものの、公称値ではなく実走行の連続記録という点で、単なる自己申告とは性質が異なるデータと言える。従来の量産PHEV SUV部門の記録も中国メーカー車が保持していたとされ、中国勢がこの手の「実走行記録」をマーケティングに使う動きは今後も続きそうだ。
純EV版の追加とグローバル展開

2026年4月29日のAuto Beijingでは、バッテリー式の純EV版「Starship 7 EV」も披露された。バッテリー容量は60.22kWhと68.39kWhの2種類で、CLTC航続はそれぞれ525km・605km。吉利の廉価EV「EX5」の上位モデルという位置づけだ。PHEVとEVの両輪でラインナップを厚くする戦略は、バッテリー技術ガイドで解説しているLFPコスト競争の流れとも重なる。
販売実績も伸びている。中国国内では2024年に20,636台、2025年には101,637台を記録した。輸出面ではオーストラリア(Starray EM-i)で2025年に1,066台、メキシコ(EX5 EM-i)で1,920台、インドネシアで166台と、各国で徐々に台数を積み上げている段階だ。吉利はこれらの初期市場での実績をもとに、中東・中南米・東南アジアの追加国への展開を計画していると報じられており、PHEVとEVの両モデルを段階的に投入する方針とみられる。ただし現時点で正式な市場拡大スケジュールは公表されていない。
日本市場から見た「入手性ゼロ」の現実
結論から言えば、2026年9月時点で星艦7を日本で正規に買う手段はない。吉利は2024年5月に日本国内でハイブリッド技術の試乗会を開催したが、その場でも「日本での販売予定はない」との説明だったと報じられている。吉利傘下の高級EVブランド「Zeekr」は2025年に日本参入を発表し、2025年ジャパンモビリティショーでは「Zeekr 009」などが2026年発売予定として展示されたが、これは星艦7を含むGalaxyブランドとは別枠の動きだ。
並行輸入という選択肢も理論上はあるが、右ハンドル仕様の有無、保安基準適合、CEV補助金(BEV中心の制度でPHEVの対象は限定的)への対応、型式認証の取得状況など、クリアすべき条件が多く、確度の高い情報は現時点で存在しない。加えてPHEVは国内の排ガス・燃費規制の認証区分がガソリン車・EVとも異なり、少量の並行輸入であっても型式認証取得のコストが車両価格を大きく上回るケースが一般的だ。中国EV各社の日本展開状況は中国EVカテゴリでも随時追っている。
BLADE NOTEの見立て
星艦7の価格戦略を見ていると、中国のPHEV SUV市場がすでに「性能を上げて価格は据え置く」フェーズに入っていることがよくわかる。2024年12月の先行価格9.98万〜13.28万元に対し、2026年モデルの実勢価格は9.58万元からとむしろ下がっている。それでいてモーター出力は160kWから175kWへ、電動航続は120kmから130〜135kmへと中身は強化されている。これは値下げ競争というより、スペック競争のコストをメーカーが吸収している状態に近い。
もう一つ注目したいのは、熱効率やCLTC燃費といった「中国基準の数値」をそのまま海外市場のマーケティングに転用している点だ。ギネス世界記録のような第三者性のあるイベントを絡めているのは、公称値への不信感を薄める狙いだろう。ただしCLTCはあくまで中国の型式認証サイクルであり、日本のユーザーがWLTC相当の感覚で数値を読むと実燃費との乖離に驚くことになる。星艦7そのものが日本に来る可能性は当面低いが、同種のPHEVシステムを積んだ車種が輸出仕様として広がっていく流れは、日本の中古車市場や並行輸入の議論にいずれ波及してくるはずだ。
出典
- Geely Galaxy launches 2026 Starship 7 EM-i(CnEVPost)
- Geely Galaxy launches 2026 Starship 7 EM-i as a major BYD Song Pro DM-i competitor(CarNewsChina)
- 星艦7発売関連記事(搜狐汽車)
- Geely raises PHEV bar with NordThor EM-i drivetrain(Wards Auto)
- Geely Galaxy Starship 7 EV unveiled with 605 km range(CarNewsChina)
- 星艦7とBYD宋PROのスペック比較(易車 BitAuto)
- 吉利ハイブリッド技術 日本試乗会報道(36Kr Japan)
- Zeekr日本市場参入報道(日本経済新聞)
- CNY/JPY為替レート(ecodb.net)
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