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日産、英国工場で奇瑞のクルマを生産か——サンダーランド工場の活路と中国メーカーの欧州戦略NEW

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中国EV: 日産、英国工場で奇瑞のクルマを生産か——サンダーランド工場の活路と中国メーカーの欧州戦略
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自社工場を中国メーカーに開放する——数年前なら考えられなかった選択肢を、日産が真剣に検討している。CnEVPostが報じたところによると、英フィナンシャル・タイムズの情報として、日産は中国・奇瑞汽車(チェリー)と英国サンダーランド工場での車両生産について協議を進めているという。

稼働率50%のサンダーランド工場

サンダーランド工場は日産の欧州生産拠点として約6,000人のフルタイム従業員を抱える。しかし現在の稼働率は約50%にとどまる。一時は30%を下回っていたが、新型リーフの生産開始でやや持ち直した。2027年には電動版ジュークの生産も予定されている。

同工場は複数の建屋に独立した生産ラインを持つ構造で、他メーカーとの設備共有が比較的容易だとされる。日産はチェリー以外にも、フォード、ステランティス、フォルクスワーゲンなど複数の自動車メーカーと過去1年にわたり同様の協議を行ってきた。

チェリーが英国で急成長している背景

協議相手としてチェリーの名前が浮上するのは偶然ではない。チェリーは英国で最も急成長している中国自動車グループで、2025年3月の全体市場シェアは6%に達した。1年前のわずか1%から急伸した格好だ。

海外生産の現地化にも積極的に動いている。今年1月には日産の南アフリカ・ロスリン工場の買収に合意し、2026年半ばに土地・建物・プレス設備を含む資産を取得予定。スペイン・バルセロナにも日産から取得した工場を持つ。南アフリカでは日産の既存従業員の大半に継続雇用を提示し、報酬水準も維持するとしている。

日産の再編と「中国車を日本メーカーの工場で作る」現実

ただし、事情に詳しい関係者2名は、チェリーとの協議が商業的な合意に至るかは不透明だと指摘する。日産は現在、大規模なグローバルリストラの最中にある。一部工場の恒久的な閉鎖と最大2万人の人員削減を進めており、サンダーランド工場の長期的な将来も不確実な状況だ。

工場閉鎖か、他メーカーへの開放か。日産が直面しているのは、単なる設備の有効活用という話ではない。グローバルで販売台数が伸び悩むなかで、固定費の重い生産拠点をどう維持するかという構造的な問題だ。

チェリーが日産の工場を活用するパターンは、南アフリカ、スペインに続いて英国で3例目となる可能性がある。中国メーカーが日本メーカーの既存インフラを買収・共有する流れは、個別の事象ではなくパターン化しつつある。欧州では中国製EVに対する追加関税が導入され、現地生産の重要性が増している。チェリーにとって英国工場の確保は関税リスクの回避策であり、日産にとっては遊休設備から収益を生む手段になる。

日本メーカーが直面する工場余剰の構造問題

この動きは英国に限った話ではない。日産は日本国内でも栃木工場と九州工場の生産能力を持て余しており、グローバルでの生産能力削減が経営課題の中心に据えられている。ホンダとの経営統合協議が2025年に破談となった後、日産は単独での立て直しを迫られており、サンダーランドのような海外拠点の維持コストは一段と重くのしかかる。

日本国内に目を向ければ、BYDが2025年末時点で全国100店舗超のディーラー網を整備し、ATTO 3やドルフィンを中心に販売を伸ばしている。中国EVメーカーの攻勢は販売面だけでなく、生産インフラの獲得という形でも進行している。日本メーカーが持つ世界各地の工場が、中国メーカーの現地生産拠点として再活用される——この構図が今後どこまで広がるかは、各社の工場稼働率と中国メーカーの欧州・アジア展開のスピード次第だ。

チェリーは英国で2026年に年間5万台の販売を目指すとされ、仮にサンダーランド工場の一部ラインを確保できれば、年間数万台規模の現地生産体制を構築する足がかりとなる。協議が合意に至るかは現時点で不明だが、サンダーランド工場の稼働率回復と6,000人の雇用維持がかかっている以上、日産にとっても簡単に断れる話ではない。

出典

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BLADE NOTE編集部
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