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PHEVバッテリーが80kWhに到達 – BEVとの境界線はどこへ消えるのかNEW

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バッテリー技術: PHEVバッテリーが80kWhに到達 – BEVとの境界線はどこへ消えるのか
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80kWh——これはつい数年前まで、BEV(純電動車)の中級グレードに搭載されていたバッテリー容量だ。その数字が今、PHEV用バッテリーに刻まれた。

中国のバッテリーメーカーSvolt Energy(蜂巣能源)が、PHEV向け大容量バッテリー「Fortress 2.0」の量産を開始した。容量は80kWh。江蘇省常州市の工場からラインオフした同製品は、中国PHEV市場で最大容量のバッテリーとなる。

前世代比35.6%増、6C充電にも対応

Fortress 2.0の80kWhという数字は、前世代の59kWhシステムから35.6%の増加にあたる。高集積設計により、体積利用率とエネルギー密度はそれぞれ6%向上した。ターゲットはDセグメントのPHEVモデルや大型ファミリーカー、オフロード用途だ。

EV走行距離は400km超。これだけ走れれば、日常使いで充電頻度はかなり減る。充電スペックも押さえておきたい。ピーク6Cの急速充電に対応し、わずか10分で400km分以上の電力を充填できるという。安全面では、ナノセラミック断熱材を初採用。1,000℃の高温下で30分間発火しない設計を実現した。

Svoltは、このバッテリーを搭載した新型PHEVモデルが今月下旬の北京モーターショーで公開予定だとしている。

PHEVとBEVの境界が消えていく

数字を並べると、PHEVとBEVの境界が急速に曖昧になっていることがわかる。

車種タイプ バッテリー容量 EV走行距離
Svolt Fortress 2.0(PHEV用) 80kWh 400km超
Leapmotor D19 EREV 80.3kWh(CATL製) 最大500km
BYD SEAL(BEV・参考) 82.56kWh 570km(CLTC)

BYD SEALのようなBEV専用セダンのバッテリー容量と、PHEVの搭載量がほぼ並んだ。Leapmotor D19のEREV(レンジエクステンダーEV)版は80.3kWhのCATL製バッテリーを積み、EV走行距離500kmを実現している。D19は本日正式に発売される。

かつてPHEVのバッテリーは20〜30kWh台が主流で、EV走行距離は100km前後にとどまっていた。それが2〜3年で倍以上に膨れ上がった。エンジンを「保険」として残しつつ、日常走行のほぼすべてを電動でまかなう。消費者がPHEVに求めるものが変わった結果だ。

中国市場では、PHEVとEREVの販売が急伸している。背景にあるのは充電インフラへの不安と、ガソリンスタンドという既存インフラへの安心感だ。バッテリー容量が80kWhに達したことで、PHEVは「エンジン付きBEV」と呼んだほうが実態に近い存在になりつつある。400〜500kmをEVモードだけで走れるなら、月に一度の長距離ドライブ以外でエンジンがかかることはほとんどない。ユーザー体験としてはBEVとほぼ同じだ。それでいて航続距離の心理的なセーフティネットがある。

この大容量化を支えているのが、LFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーのコスト下落だ。中国ではLFPセルの価格が2024年から2026年にかけて約40%下落し、1kWhあたり40ドル台に突入したとされる。かつてなら80kWhのバッテリーをPHEVに積むのはコスト的に非現実的だったが、原材料価格と製造効率の改善が「大は小を兼ねる」設計を可能にした。車両価格への上乗せが抑えられれば、大容量PHEVは一部のプレミアムモデルにとどまらず、量販セグメントにも広がる可能性がある。

日本のPHEVは周回遅れか

日本メーカーのPHEVを見ると、トヨタRAV4 PHVのバッテリー容量は18.1kWh、三菱アウトランダーPHEVは20kWh。EV走行距離はいずれも80〜90km程度にとどまる。中国勢の80kWhとは4倍の差がある。

もちろん、バッテリーを大きくすればコストも重量も増す。日本メーカーが小容量に抑えているのは、コスト最適化という合理的な判断でもある。ただ、中国市場で「PHEVでも400km走れて当然」という期待値が定着すれば、グローバル市場の基準も引き上げられる。

Svoltは長城汽車からスピンオフしたバッテリーメーカーで、中国の車載バッテリー搭載量シェアは2026年3月時点で1.84%。CATLやBYDと比べれば小規模だが、大容量PHEVバッテリーという成長セグメントで先手を打った格好だ。北京モーターショーで公開される搭載車両の価格帯次第では、PHEVの「十分なバッテリー容量」の定義そのものが書き換わることになる。

出典

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BLADE NOTE編集部
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