VWが中国専用EV3車種を一挙公開 – BYDと重なる価格帯で巻き返せるかNEW
10万元(約210万円)級のエントリーモデルから全長5m超のフラッグシップセダンまで——フォルクスワーゲン(VW)が4月21日、中国市場向けに3つの新型EVを同時に披露した。ジェッタX、ID. Aura T6、ID. Unyx 09。いずれも中国専用開発で、小鵬汽車(Xpeng)との技術提携やホライズン・ロボティクスとの合弁技術を搭載する。
エントリーからフラッグシップまで:3車種の狙い
CnEVPostの報道によると、VW傘下のジェッタブランドが公開した「ジェッタX」は、マット・フォレストグリーンの角張ったSUVコンセプト。光るブランドロゴやフローティングルーフを採用し、これまでの廉価ブランドのイメージからの脱却を図る。
価格帯は10万元(約210万円)前後。ジェッタは2028年までに5車種を投入し、うち4車種をNEV(新エネルギー車)とする計画で、最初の量産NEVは2026年内に市場投入予定。中期目標として年産40〜50万台を掲げる。この数字はVWの2025年中国販売台数38.6万台とほぼ同規模であり、ジェッタブランド単独でVW中国全体に匹敵する販売規模を目指すという野心的な計画だ。
この価格帯はBYDのSeagull(海鷗、約7〜10万元)やDOLPHIN(約10〜13万元)と真正面から重なる。VWグループは2030年までにコンパクトモデルがNEV市場の半分を占めると見込んでおり、ボリュームゾーンでの戦いを避けられないと判断した。背景には、一汽フォルクスワーゲン・ジェッタ・オートモーティブ・テクノロジーという新会社の設立がある。VWの技術資産と中国現地サプライチェーンを統合し、中国ブランドと同じ土俵で戦える体制を構築する。
一方、CarNewsChinaが報じた一汽フォルクスワーゲン開発のID. Aura T6は、5人乗りの中型クロスオーバー。最大の特徴はXpengと共同開発したCEA(電子電装アーキテクチャ)の初搭載車であることだ。ECU(電子制御ユニット)を30%削減し、AIコックピット、中国特化のADAS機能、OTAアップデートに対応する。LiDARベースの運転支援システムは、VWグループとホライズン・ロボティクスの合弁「Carizon」が供給する。外観はID.6を彷彿とさせるSUVとMPVの中間的なフォルムで、パワートレインはBEV(純電気)だが、今後Auraシリーズとしてプラグインハイブリッド(PHEV)やレンジエクステンダー(EREV)も展開予定。
VW安徽(旧JAC・VW合弁)が手がけるID. Unyx 09は全長5m超のフラッグシップEVセダン。先行発売されたID. Unyx 08クロスオーバーとデザインラインを共有し、Face IDセンサーやイルミネーテッドバッジなど先進装備を搭載した。L2レベルのADASは都市部・高速道路でのNOA(Navigate On Autopilot)機能に対応する。バッテリーやパワートレインの正式発表はないが、CarNewsChinaはID. Unyx 08と同等のスペック——LFPバッテリー82kWhまたは95kWh、後輪駆動と四輪駆動、出力230kW〜370kW——を予想している。
2つのソースが映す戦略の二面性
今回の3車種を報じた2つのメディアは、それぞれ異なる側面に焦点を当てている。CnEVPostはジェッタXの価格戦略と販売目標に注目し、10万元帯でBYDと直接競合する構図を強調した。一方CarNewsChinaは、ID. Aura T6とID. Unyx 09の技術アーキテクチャに重点を置き、Xpengとの共同開発CEAやCarizonのLiDARなど、中国企業との技術連携を詳報している。
この報道の力点の違いは、VWの中国戦略の二面性をそのまま反映している。エントリー市場ではコストとスケールで勝負し、中〜上位市場ではソフトウェアと自動運転技術で差別化する——という二正面作戦だ。
| モデル | セグメント | 価格帯 | 競合する中国ブランド |
|---|---|---|---|
| ジェッタX | エントリーSUV | 約10万元〜 | BYD(Seagull/DOLPHIN)、Leapmotor T03 |
| ID. Aura T6 | 中型クロスオーバー | 未公表 | BYD Song Plus、Xpeng G6 |
| ID. Unyx 09 | 大型セダン | 未公表(08は82-95kWh) | NIO ET7、Zeekr 007 |
数字が突きつける現実と日本市場との距離
ジェッタXの10万元帯は中国メーカーが最も得意とする領域で、利益率が極めて薄い。ジェッタが掲げる年産40〜50万台という目標は、VWの2025年中国販売実績38.6万台(前年比15.4%減)とほぼ同じ水準だ。ジェッタブランド単独でVW中国全体の販売規模を上回ろうという計画は、裏を返せばそれだけの規模がなければ収益が成立しないことを意味する。
ID. Aura T6とID. Unyx 09は技術勝負の領域に位置する。Xpengとの共同開発アーキテクチャが、中国ユーザーが求めるソフトウェア体験——音声操作、OTA、高度なADAS——をどこまで実現できるかが問われる。
なお、VWは日本ではID.4を展開しているが、今回発表された3車種はいずれも中国専用開発。Xpengとの共同開発アーキテクチャも中国市場に最適化されており、日本を含む他市場への展開は現時点で計画されていない。VWの電動化戦略は地域ごとに大きく異なる方向に進んでいる。
量産第1号となるジェッタ初のNEVモデルは年内に中国市場へ投入される。2028年までにNEV20車種以上という計画に対し、まずこの1台目の販売実績がVWの中国巻き返しの行方を左右する。
出典
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