BMW・メルセデスの中国充電合弁にSERES参画 – 欧中連携が示す充電インフラの新潮流NEW
欧州プレミアムブランド2社が中国で立ち上げた充電インフラ合弁に、中国メーカーが対等な立場で加わった。BMWとメルセデス・ベンツが高出力充電サービスを目的に中国で設立した合弁会社「IONCHI」に、SERES(セレス)が均等株主として新たに参画する。3社の持株比率はそれぞれ33.3%。欧州勢が主導してきた充電網に中国ローカルプレーヤーが合流した——EV充電ビジネスの力学は、すでに変わり始めている。
IONCHIとは何か——欧州2社が中国で仕掛けた充電戦略
IONCHIは、BMWとメルセデス・ベンツが中国国内でプレミアムセグメント向けの高出力充電ネットワークを構築するために設立した合弁会社だ。対象はすべてのEVだが、両ブランドのオーナーには専用の充電体験を提供するという差別化モデルを採用している。
テスラのスーパーチャージャーが自社ユーザー優先で拡大してきたのと似た発想だが、IONCHIの場合は複数のプレミアムブランドが共同で「プレミアム充電」という付加価値を打ち出している点が異なる。中国のEV市場は価格競争が激しく、車両本体での差別化が難しくなるなかで、充電体験をブランド価値の一部に組み込む狙いがある。
SERESとAITO——ファーウェイ連携で急成長した中国勢
今回参画したSERESは、ファーウェイとの協業で生まれたプレミアムブランド「AITO」を展開する中国メーカーだ。AITO M9をはじめとするSUVラインナップは中国市場で急速に販売を伸ばしており、プレミアムEVセグメントではBBA(BMW・ベンツ・アウディ)に食い込む存在になっている。
IONCHIへの参画で、AITOユーザーもBMWやメルセデスと同等のプレミアム充電サービスを利用できるようになる。SERES側は充電インフラを自前で整備するコストを抑えつつブランドイメージを引き上げられる。欧州2社は中国市場でのネットワーク拡大を加速させるパートナーを得た。
3社均等出資という枠組みが重要だ。単なる「外資への開放」ではなく、対等な戦略的提携であることを意味する。
競争と協調が入り混じる中国充電市場——そして日本との落差
中国の公共充電インフラは世界最大の規模を誇る。中国電動汽車充電基礎設施促進連盟(EVCIPA)のデータでは、公共充電スタンド数は300万基を超え、その大半は国家電網や星星充電、特来電といった国内大手が運営する。
この巨大市場で欧州メーカーが独自の充電網を持とうとする理由は明確だ。汎用の公共充電器は品質にばらつきがあり、プレミアムブランドの顧客が求める体験水準を満たさないケースが少なくない。出力の安定性、アプリ連携、決済のスムーズさ、設置場所の利便性。こうした「質」の部分がIONCHIの存在意義になる。
SERESの参画は、この「質」の競争に中国勢も本腰を入れたことの表れだ。BYDやNIOはすでに独自の充電・バッテリー交換ネットワークを構築しているが、合弁方式でプレミアム充電網を共有するアプローチは珍しい。車両販売では競合する3社が、充電インフラでは手を組む。コスト分担とネットワーク密度の両立を狙うこのモデルは、欧州の「IONITY」(VWグループなどが出資)や北米でのNACS規格統一と並ぶ、メーカー主導の充電インフラ整備の潮流に位置づけられる。
翻って日本はどうか。CHAdeMO規格の急速充電器は全国に約1万基で、経済産業省は2030年までに3万基の目標を掲げるが達成は見通せていない。充電ネットワークの中核を担うe-Mobility Powerにはトヨタ・日産・ホンダなどが出資しているものの、出力は50kW級が主流で150kW超の高出力器はまだ少数だ。メーカーが充電体験をブランド価値として設計し、共同で高出力網を整備するという発想——IONCHIや IONITYが実践しているモデル——は、国内ではまだ具体化していない。
充電インフラは「共有資産」になるか
IONCHIへのSERES参画が興味深いのは、欧中メーカーが対等な関係で充電網を「共有資産」として運営する点だ。車両で競い、充電で協調する。この棲み分けが成立する背景には、高出力充電網の整備コストが単独では割に合わないという現実がある。
同様の判断は北米でも起きた。GMとフォードがテスラのNACS規格を採用した理由は、独自規格の充電網を一から構築するより、既存ネットワークに乗る方が合理的だからだ。規格の違いこそあれ、「競合と充電インフラを共有する」という選択は、もはやグローバルな趨勢といえる。
日本のe-Mobility Powerも形式上はメーカー共同出資だが、充電体験の差別化やブランド戦略との連携は薄い。IONCHIモデルが突きつけているのは、充電インフラを単なるユーティリティではなく、顧客体験の一部として再定義できるかという問いだ。
出典
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