吉利が熱効率48.41%のHEV新技術を発表 – トヨタ超えの数値が意味することNEW
熱効率48.41%——この数字が本物なら、ハイブリッド技術の勢力図が塗り替わる。中国・吉利汽車(Geely)が4月13日に発表した新ハイブリッドシステム「i-HEV インテリジェント・ハイブリッド」は、ガソリンエンジンの熱効率でギネス世界記録を更新したと謳う。燃費は2.22L/100km。中国の自動車メーカーが、トヨタやホンダが長年リードしてきたHEV領域に本格参入する狼煙だ。
i-HEVの技術的核心——エンジンとモーターの「分離」戦略
i-HEVの中核は2リッターBHEシリーズターボエンジンと「11-in-1」電動ドライブの組み合わせにある。電動モーター出力は最大230kW(308馬力)で、走行時の電力駆動比率は約80%に達する。エンジンとモーターを戦略的にデカップリング(分離)し、モーター主導の駆動レイアウトに移行した点が従来のハイブリッドとの違いだ。
EVモードでの最高速度は66km/h。つまり市街地走行の大半をエンジンを回さずに走れる。0-30km/h加速は1.84秒と、発進時のレスポンスも鋭い。
注目すべき点は「AI Cloud Power」の初搭載だろう。温度・湿度・標高などの外部データをAIがリアルタイムでセンシングし、ガソリンと電力のエネルギー配分を自己最適化する。吉利はこれにより全体のエネルギー効率が10%以上向上すると主張している。クルマ単体の効率追求から、環境データを取り込んだシステム全体の最適化へ踏み込んだ格好だ。
48.41%の衝撃——トヨタ・ホンダとの比較
現在、トヨタの最新ハイブリッド用エンジンの最高熱効率は約41%。ホンダのe:HEV用エンジンも同水準にある。内燃機関の熱効率は40%台に入ると1%の改善すら困難とされる領域で、吉利の48.41%という数値は7ポイント以上の差をつけている計算になる。
ただし条件を揃えた比較には注意が必要だ。Response.jpの報道ではPHEV(プラグインハイブリッド)技術として紹介されているが、CarNewsChinaによればi-HEVは外部充電不可のHEVシステムだとされている。PHEVなら大容量バッテリーの電力でエンジンの稼働領域を効率の良いゾーンに限定しやすく、見かけ上の熱効率を高めやすい。HEVとして達成したなら技術的インパクトはさらに大きい。この点は量産車の仕様が明らかになるまで留保が要る。
成果はギネスワールドレコーズの検証済みで、中国の自動車試験機関CATARCで認証済みと吉利は説明する。第三者認証がある点は信頼材料だが、計測条件の詳細が公開されるまでは額面通りに受け取るのは早い。
搭載車種——旗艦SUV「KX21」とベストセラー4車種
i-HEVは今年発売予定の複数モデルに順次搭載される。対象は星瑞(Preface)、星越L(Monjaro)、博越L(Starray)、第5世代帝豪(Emgrand)の4車種で、いずれも吉利ブランドの主力モデルだ。
さらにi-HEV発表会では旗艦モデル「KX21」がティザー公開された。CarNewsChinaによれば、KX21はフルサイズクロスオーバーSUVで、吉利Galaxy M9(PHEV)の姉妹車にあたる。ボディサイズは5205×1999×1800mm、ホイールベース3030mmと堂々たる体格。ルーフにはLiDARを搭載し、先進運転支援にも対応する。Galaxy M9の内装を踏襲するなら、30インチセンターディスプレイや17.3インチ天井モニター、27スピーカーなどが装備される可能性がある。
吉利がHEV旗艦を投入する背景には、中国政府によるBEV・PHEV・EREV向け補助金の段階的縮小がある。外部充電不要のHEVは充電インフラが未整備の地域でも売りやすく、海外展開でも有利だ。奇瑞(Chery)、長安(Changan)、長城(GWM)もHEVパワートレインを相次ぎ発表しており、中国勢のHEVシフトは吉利に限った話ではない。
吉利グループの現在地と課題
吉利汽車はVolvo Cars、Polestar、Zeekr、Lotus、Lynk & Coを傘下に持つ巨大グループの中核だ。グループ全体では年間300万台超を販売する。一方、吉利ブランド単体(Galaxy除く)の2026年第1四半期の中国国内販売は約23.4万台で、前年同期比34.7%減と苦戦している。
i-HEVの投入は、落ち込む販売をテコ入れする戦略的一手でもある。トヨタやホンダのHEVが世界市場で支持される最大の理由は「充電不要で燃費が良い」というシンプルな価値だ。吉利がその土俵に熱効率48%超のエンジンを持ち込むなら、競争の質は変わる。
量産車での実燃費がカタログ値にどこまで近づくか。AI Cloud Powerの最適化が実走行で本当に10%の差を生むか。技術発表から量産車レビューが出揃うまでが、この数字の真価が問われるフェーズになる。KX21を含む搭載モデルの発売は2026年内を予定している。
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