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カナダが中国EVメーカー3社と直接協議 – 関税引き下げと投資誘致の行方NEW

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中国EV: カナダが中国EVメーカー3社と直接協議 – 関税引き下げと投資誘致の行方
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100%だった関税を6.1%へ——カナダが中国製EVに対して打ち出した大胆な方針転換が、具体的な交渉フェーズに入った。CnEVPostの報道によると、カナダのマニンダー・シドゥ国際貿易大臣が広州を公式訪問し、BYD、Xpeng、GACの3社とカナダ市場への参入について詳細な協議を行った。華南地域へのカナダ大臣の公式訪問は2018年以来、実に8年ぶりとなる。

「EVとキャノーラ」の交換条件

今回の訪問の背景には、年初にマーク・カーニー首相が北京を訪問した際に締結された二国間貿易協定がある。通称「EV対キャノーラ」協定と呼ばれるこの合意は、端的に言えば物々交換だ。カナダ側は年間最大4万9000台の中国製EVに対し、従来の100%関税を撤廃して最恵国待遇の6.1%のみを適用する。見返りに、中国はカナダ産キャノーラ(菜種)への関税を約85%から15%へ引き下げる。

カナダの農業セクターにとってキャノーラは主要輸出品であり、中国市場の関税障壁は長年の懸案だった。EV関税の大幅引き下げと引き換えに農業分野の市場アクセスを確保するという構図は、単純な自由貿易論では片付けられない政治的リアリズムを反映している。

BYDの「完全子会社」方針とカナダ政府の条件

3社のなかで最も具体的な動きを見せているのがBYDだ。ステラ・リー副社長は先月、カナダでの製造施設設立を検討中だと明言した。ただし、合弁ではなく完全子会社としての独立運営を希望しているという。

BYDはすでにタイ・ラヨーン工場を2024年に稼働させ、ハンガリー・セゲドでは欧州初の自社工場を建設中、ブラジル・バイーア州でも生産拠点を立ち上げている。いずれも完全子会社方式だ。カナダ進出が実現すれば、北米初の自社生産拠点となる。

ここに摩擦の種がある。カナダのメラニー・ジョリー産業大臣は、自動車分野の新規投資にはカナダの現地労働力と部品の活用が不可欠だと主張している。BYDが求める完全所有・独立運営と、カナダ政府が求める現地調達・雇用創出。両者の落としどころはまだ見えていない。

さらに厄介なのが米国の存在だ。米国政府はカナダが中国EVの対米流入の「裏口」になることへの警戒を隠さず、報復関税の可能性を繰り返し示唆している。

ステランティスとリープモーターの動きも

中国EVメーカーの直接進出だけが選択肢ではない。欧州大手ステランティスは、出資先の中国メーカー・リープモーターと共同で、オンタリオ州ブランプトンにある休止中の組立工場でリープモーターブランドのEVを製造する計画を初期段階で検討している。ステランティスはリープモーターに20%出資しており、すでに欧州ではステランティスの販売網を通じてリープモーター車の販売を進めている。

この計画が実現すれば、関税引き下げ合意後初の中国系自動車産業によるカナダ国内投資となる。欧州企業を介した間接的な進出という形は、米国の反発を抑える狙いがある。

1251億ドルの貿易関係と各国の温度差

シドゥ大臣は広州訪問に先立ち、海南省で開催された中国国際消費品博覧会にカナダ企業約40社を率いて参加した。名誉招待国として24件の商業契約・覚書が締結されたほか、アリババやJD.comの幹部との会談も実施。中国はカナダにとって第2位の貿易相手国であり、2025年の二国間貿易額は1251億ドルに達する。

中国製EVへの対応は国ごとに大きく異なる。EUは最大45.3%の追加関税を課し、米国は100%関税を維持したまま。対照的にカナダは100%から6.1%への引き下げに踏み切った。

日本は追加関税を課していないが、中国EVの存在感は限定的だ。BYDは2023年にATTO 3で日本市場に参入し、DOLPHINやSEALを投入してきたが、2025年の日本国内EV販売に占めるBYDのシェアはまだ数%にとどまる。カナダのように関税を外交カードに使って工場誘致まで踏み込むアプローチとは対照的に、日本は市場の自然な競争に委ねている格好だ。

BYDのカナダ工場が実現するか、ステランティス経由のリープモーター生産が先行するか——いずれにせよ、年間4万9000台の上限枠は中国メーカー全体で分け合うには小さく、米国の報復リスクも消えていない。カナダ方式は、その制約のなかで成果を出せるかが問われる。

出典

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BLADE NOTE編集部
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