中国充電インフラの覇権争い – BYD自社網 vs 異業種JV、主流はどちらかNEW
BMW、メルセデス・ベンツ、そして中国のSeres(賽力斯)。この3社が共同出資する充電合弁会社「Ionchi(引望)」が、中国のプレミアムEV充電インフラの勢力図を書き換えようとしている。
独中3社が均等出資する異例の合弁
Seresは2025年4月11日、BMWとメルセデス・ベンツが2024年に設立した充電合弁会社Ionchiへの出資参画を発表した。3社はそれぞれ33.3%の均等出資となる。Seresが展開するプレミアムEVブランド「AITO(問界)」は、ファーウェイとの協業で知られる新興勢力だ。
Ionchiは2023年に発表した計画で、2026年末までに中国国内で少なくとも1,000カ所の超急速充電ステーション、約7,000基の高出力充電器の設置を目指している。2025年12月時点の実績は430ステーション、2,408基。37都市に展開済みだが、目標達成にはここから倍以上のペースが必要になる。
「囲い込み」と「開放」の二面戦略
Ionchiのネットワークは全てのEVユーザーに開放される公共充電インフラだ。ただし、BMW・AITO・メルセデスのオーナーにはオンライン予約や優先電力配分といった特典が用意される。都市部の商業中心地を優先的にカバーし、充電速度だけでなくサービス品質で差別化を図る狙いがある。
この「公共インフラだがブランドオーナーは優遇」というモデルは、充電体験そのものをブランド価値に組み込む発想だ。日本でもBMWやメルセデスはEV販売を拡大しているが、CHAdeMOからNACSへの規格移行議論が続く中、自社ブランドに最適化された充電体験の構築は手つかずに近い。中国での取り組みは、その先行事例として興味深い。
BYDは自前主義、NIOは交換式——三つ巴の構図
中国の充電インフラ整備には、大きく3つのアプローチが並走している。
| アプローチ | 代表企業 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自社充電網の垂直統合 | BYD | 販売台数を武器に自社ネットワークを拡大。囲い込み効果が高い |
| 異業種JV方式 | BMW・メルセデス・Seres(Ionchi) | 投資負担を分散し、ブランド横断で展開。プレミアム体験を共有 |
| バッテリー交換(BaaS) | NIO | 充電不要の即時交換。インフラ投資が重く、規格統一が課題 |
BYDは2025年だけで年間400万台超を販売する巨大メーカーに成長した。その圧倒的な台数を背景に、自社充電ネットワーク「BYD充電」を中国全土に展開している。スケールメリットで設置コストを吸収できる点が強みだ。一方で、他ブランドのユーザーにとっては恩恵が薄く、エコシステムとしての広がりには限界もある。
NIOのバッテリー交換ステーションは2,700カ所を超え、独自の充電体験を築いてきた。ただし交換式は規格の互換性が壁となり、業界標準にはなり切れていない。
JV方式は主流になれるか
Ionchiのような異業種JVが注目される理由は明快だ。充電インフラは巨額の初期投資が必要で、単独では採算が合いにくい。とりわけ販売台数で中国勢に及ばない欧州メーカーにとって、現地パートナーとの共同投資は合理的な選択になる。
SeresのAITOブランドはファーウェイの技術支援を受け、中国プレミアムEV市場で急速にシェアを伸ばしている。BMWとメルセデスにとっては、中国市場に根差したブランドを取り込むことで、充電ステーションの稼働率を高められる。Seres側も、自前で充電網を構築するコストを省きながらプレミアムな充電体験を顧客に提供できる。三者にとって利害が一致した形だ。
中国政府も充電インフラの整備を重点政策に掲げており、合弁形式は規制当局の承認を得やすいという側面もある。今回のSeres参画も最終的な規制承認待ちだが、通常の手続きとされている。
当面は自社網とJVの併存が続くだろう。BYDのように年間数百万台を売るメーカーは自社網の経済合理性が成立する。しかし、それ以外の大半のメーカーにとっては単独での充電網構築はコスト的に非現実的で、JV方式やサードパーティへの依存が現実解になる。
Ionchiが2026年末の1,000ステーション目標を達成できるかが、JV方式の試金石となる。現状の430カ所から残り18カ月で570カ所以上——月平均30カ所超のペースだ。SeresのAITOは2025年4月22日に新型M6を含む新モデルの発表を控えており、充電インフラの拡充とセットでの攻勢が見込まれる。
出典
BYD・中国EVの最新ニュースを毎日配信中。
フォローして最新情報をチェック!