EV保険料比較2026-型式別料率クラスでガソリン車と何倍差かNEW
車両保険の型式別料率クラスを2026年時点で並べると、テスラ モデルYは最高クラスの17。同価格帯のトヨタRAV4はクラス7で、保険料換算では約4倍近い開きが出る。
「EVは保険料が高い」という話は断片的に語られがちだが、実際にどの車種が何クラスで、同じ価格帯のガソリン・HEV車と比べて何段階違うのかを一覧で見たことがある人は少ない。本稿では損害保険料率算出機構(GIROJ)が毎年1月に改定する型式別料率クラスをもとに、EVとガソリン/HEV車を横断で並べ、差が生まれる理由まで掘り下げる。基準日は2026年9月時点の公開情報による。
型式別料率クラス一覧-EVとガソリン/HEV車の車両保険クラス比較

まず結論となる数値を並べる。型式別料率クラスは自家用普通・小型乗用車でクラス1〜17に区分され、クラスが1上がるごとに保険料はおよそ1.1倍(旧方式では隣接クラス比1.2倍)になる目安がある。クラス1とクラス17では単純計算で約4.3倍の差になる。
| 順位 | 車種(型式) | 区分 | 車両価格帯 | 車両料率クラス |
|---|---|---|---|---|
| 1 | テスラ モデルY(2WD) | EV | 563〜727万円 | 17(最高) |
| 2 | テスラ モデル3(型式3L13T/3L23等) | EV | 非公表 | 13〜17 |
| 3 | 日産アリア(2WD) | EV | 659〜860万円 | 11 |
| 4 | トヨタ bZ4X(2WD) | EV | 550〜650万円 | 10〜11 |
| 5 | 日産リーフ(最新型式ZE2) | EV | 非公表 | 12 |
| 6 | 日産リーフ(旧型式ZE0) | EV | 非公表 | 7 |
| 7 | 日産ノート(最新型式E13) | ガソリン/HEV | 非公表 | 10 |
| 8 | 日産エクストレイル(2WD・HEV) | HEV | 360〜475万円 | 10 |
| 9 | トヨタRAV4(HEV) | HEV | 385〜433万円 | 7 |
| 10 | 日産ノート(型式E11・NE12) | ガソリン | 非公表 | 4〜5 |
なお中国製EV(BYD ATTO3、ドルフィン等)についても型式別料率クラスは算出対象になり得るが、GIROJの一次ソースで型式ごとの数値を直接確認できる情報には本稿執筆時点で到達できなかった。ネット上に流通する「ATTO3はクラス14」といった数値は出典を辿れない二次情報のため、本稿では採用しない。
クラス差を金額に置き換えるとイメージしやすい。仮にRAV4(クラス7)の車両保険料が年間6万円だとすると、クラスが1上がるごとに約1.1倍で計算した場合、クラス17のモデルYは10クラス分の差があるため1.1の10乗、つまり約2.6倍、金額にして約15.6万円前後になる計算だ。もちろん実際の保険料は等級(ノンフリート等級)や年齢条件、走行距離条件などクラス以外の要素でも大きく変わるため、この数字はあくまで型式別料率クラスの差だけを取り出した目安に過ぎない。それでも「クラスが1〜2違うだけ」と軽く見ていると、実際の見積もりで数万円単位の差に驚くことになりかねない。
表の読み方-上位と下位で何が違うか
上位に並ぶのはテスラの2車種だ。モデルYは車両クラスの上限である17に達しており、これは制度上それ以上高くなりようがない状態を意味する。モデル3も型式(グレード)によって13〜17まで幅があり、2025年の改定では型式「3L23B」が対人・対物・車両のすべてで1クラス上昇している。同じ車名でもグレード違いの型式単位でクラスが動く点は見落とされやすい。
一方、日産リーフは型式によってクラス7〜12まで開きがある。旧型式ZE0は7と、RAV4(7)やエクストレイル・最新ノート(ともに10)とほぼ並ぶ水準だ。つまり「EVだから一律で高い」わけではなく、車格・価格帯・型式が新しいほど上がる傾向はガソリン車にも共通している。ノートも旧型式(4〜5)から最新のe-POWER・E13(9〜10)まで倍以上クラスが上がっており、これはEV固有の現象ではなく高機能化・高価格化に伴う一般的な傾向と重なる。
それでもEV上位勢だけ突出する理由
ただし同価格帯で厳密に比べると差は残る。bZ4X(550〜650万円、クラス10〜11)とRAV4(385〜433万円、クラス7)は価格帯がやや異なるものの、より近い価格帯のアリア(659〜860万円、クラス11)とエクストレイル(360〜475万円、クラス10)を並べても、EV側が1クラス以上高い。テスラに至っては価格帯を問わず最高クラスに張り付いている。ここに「価格が上がれば自然にクラスも上がる」では説明しきれない、EV固有の要因があると見るのが妥当だ。
特にモデル3の型式間の差は示唆的だ。同じ車名でも下位グレードの型式はクラス13前後にとどまる一方、上位グレード(パフォーマンスモデルなど)は17に達する。これは価格差だけでなく、出力・車重・タイヤサイズといった仕様差が事故時の損害額に直結しやすいことを示している。ガソリン車でも高性能グレードほどクラスが上がる傾向は同様だが、EVの場合はベースグレードとの価格差が比較的小さいのに、クラスの差はより急激に開く点が特徴的だ。
なぜEVの車両料率クラスは高くなるのか-修理費と部品供給の事情
型式別料率クラスは過去3年間の保険金・保険料の実績(損害率)から機械的に算出される。GIROJ自身が「EVというカテゴリだから意図的に高く設定する」という制度設計をしているわけではない。あくまで型式ごとの事故実績を反映した結果であり、いわゆる「EV税」のような陰謀論的な話ではない。ではなぜ結果として高くなるのか、要因は大きく3つに分けられる。
ギガキャスト構造による板金修理の難しさ
テスラが採用するギガキャスト(一体成形アルミダイキャスト車体)は、従来のプレス鋼板を溶接する構造と違い、車体の広い範囲を一体の鋳造部品で作る。アルミはスチールより硬度が高く、板金での修正加工がしづらい。部分的な補修が効きにくいため、軽微な事故でも大型パーツごとの交換になりやすく、修理費が一気に膨らむ。この構造は今後、他メーカーのEVにも広がっていく可能性があり、同種の傾向は業界全体に波及しうる。
バッテリー・モーターは「修理」より「交換」が前提
リチウムイオンバッテリーは無人化・全自動ラインで製造される精密部品で、現場での分解修理はほぼ想定されていない。液冷配管を含むパック構造も分解が難しく、損傷時は交換対応になりやすい。駆動用モーターに使われるネオジム磁石はフェライト磁石の約10倍の磁力を持ち、耐久性は高い反面、こちらも分解修理向きの部品ではない。バッテリー技術そのものの詳しい仕組みはバッテリー技術ガイドでも解説している。結果として、事故一件あたりの保険金支払額(損害率)を押し上げやすい構造になっている。
整備網が追いついていない
ナルネットコミュニケーションズが2022年末に独立系整備工場1225件を対象に行った調査では、電動車の修理に対応可能と回答した工場は約45%にとどまる。バッテリーやインバーター、電動アクスルといった主要部品はディーラー以外での対応が難しく、修理先が限られることで修理期間が長期化しやすい。修理期間が延びれば代車費用(レンタカー特約)もかさみ、これも損害率に効いてくる。
用途別・条件別のEV選び方-保険料も含めて考える
ここまでの数値を踏まえ、使い方別にどう考えるべきかを整理する。
とにかく保険料を抑えたい場合
同じEVでも型式・グレードでクラスが大きく変わる。リーフのように旧型式であればクラス7台まで下がる例もあり、最新・上位グレードにこだわらなければ保険料面での負担は軽くできる。逆にモデルYやモデル3の上位グレードは価格だけでなく保険料でも最上位クラスになる前提で予算を組む必要がある。見積もりを取る際は、同じ車種名でも型式(グレード)によってクラスが数段階変わることを保険会社に確認し、複数グレードで見積もりを比較するのが実務的には有効だ。
日本車EV・国産中心で検討する場合
bZ4Xやアリアはクラス10〜11でテスラより低いが、同価格帯のHEV(RAV4、エクストレイル)と比べるとなお1クラス前後高い。車両本体価格だけでなく、車両保険の年間コストも含めた総保有コストで比較する視点が要る。BYDを含む中国製EVを検討する場合は、現時点で型式別料率クラスの一次情報が確認しづらい車種があるため、見積もり段階で保険会社に実際のクラスを確認するのが確実だ。BYD各車種の価格・スペックはBYD車種一覧でまとめている。なお等級(ノンフリート等級)が高い契約者ほどクラス差による保険料への影響は相対的に緩和される傾向があるため、既にゴールド免許や高等級を持つ人ほど、車種選びの自由度は保険料面でも広がりやすい。
| 重視する条件 | 候補 | 車両クラス目安 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 保険料重視 | リーフ旧型式(ZE0) | 7 | HEVと同水準 |
| バランス重視 | bZ4X、アリア | 10〜11 | 同価格帯HEVより1クラス前後高い |
| 性能・ブランド重視 | モデル3(グレードによる) | 13〜17 | 最上位グレードは保険料も最高水準 |
| 性能最優先 | モデルY | 17(最高) | 制度上これ以上は上がらない |
数値を見るときの前提と注意点
型式別料率クラスは毎年1月1日に改定される。本稿の数値は2026年9月時点で確認できた各社の型式別データに基づくが、次回改定(2027年1月)で変動する可能性がある。購入や乗り換えを検討する際は、GIROJの型式別料率クラス検索、もしくは加入予定の保険会社の見積もりで最新クラスを必ず確認してほしい。
また各保険会社はGIROJの参考純率をそのまま使うとは限らず、独自のクラス設定を行う場合がある。ここに挙げた数値は業界統一の確定保険料ではなく、あくまで参考純率の目安である点も踏まえてほしい。加えて、2024〜2025年にかけてクラス変動幅のルール自体が「隣接クラス比1.2倍・±1クラス単位」の旧方式から「√1.2倍刻み・±1〜4クラス変動可」の新方式に改定されており、年度をまたいだ単純比較には注意が要る。この新方式では1年で最大4クラスまで一気に動く可能性があるため、モデルYのように既に上限の17に達している型式は動きようがない一方、リーフやモデル3のように型式間で開きのある車種は、次回改定で従来より大きく変動するリスクとチャンスの両方を抱えている。
BLADE NOTEの見立て
この数値を見て「EVは保険料が高いから損」と結論づけるのは早計だと考える。数字が示しているのは、価格帯が同じでもEVの方が高くなりやすいという傾向であって、EVそのものへの罰則ではない。損害率という統計の性質上、修理費が高く・修理先が限られ・代車費用がかさみやすい型式は、EVかどうかに関わらずクラスが上がる。実際、旧型式のリーフはガソリンHEVと同水準まで下がっている。
むしろ注視すべきは、ギガキャストのような「修理より交換」を前提にした車体構造が、今後EV全体に広がっていくかどうかだ。もし広がれば、型式別料率クラスは構造的にEV全体を押し上げる方向に働く。逆に、独立系整備工場の電動車対応率(現状45%程度)が上がり、部品供給網が整備されれば、損害率は下がりクラスも落ち着く余地がある。つまり保険料の行方は、メーカーの車体設計思想と整備インフラ整備のどちらが先に動くか、という産業側の変数で決まる。中国製EVの型式クラスが公開情報から追いにくい現状も、この業界の過渡期らしさを表している。
出典
- 型式別料率クラス検索(損害保険料率算出機構)
- 型式別料率クラスの仕組み2025(損害保険料率算出機構)
- 型式別料率クラスの解説(チューリッヒ保険)
- 型式別料率クラスの改定解説(インズウェブ)
- EVとガソリン車の保険料比較(TEPCO EV Days)
- テスラの修理費が高い理由(EVsmartブログ)
- ギガキャストと修理費の関係(36Kr Japan)
- EVバッテリー・モーターの修理事情(EV Times)
- 独立系整備工場の電動車対応調査(Merkmal)
- BYD e自動車保険について(webCG)
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