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テスラFSD課金 vs BYD標準搭載 – 自動運転で分かれる2つの収益モデルNEW

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テスラFSD課金 vs BYD標準搭載 – 自動運転で分かれる2つの収益モデル

テスラはFSD(完全自動運転)を月額課金で売る。BYDは高度運転支援を全車に無料で付ける。自動運転技術の収益化で、両社はまったく逆の道を歩んでいる。

テスラ、FSDサブスクで「利益率の高い柱」を構築

テスラが4月22日に発表した2026年Q1決算によると、総売上高は223億8700万ドル(前年同期比16%増)で、自動車部門の回復が鮮明になった。FSD(Full Self-Driving)のサブスクリプション収入が、この回復を支える柱の一つだ。月額99ドル(米国)で提供されるFSDは、車両販売後も継続的にキャッシュを生む「リカーリング収益」として機能している。

テスラのアプローチは明快で、ハードウェアは全車に搭載済みで、ソフトウェアのアンロックに課金する。FSD完全版の一括購入は8,000ドル。サブスク加入率の具体的な数字は開示されていないが、決算説明会では「FSD収入が自動車事業のマージン改善に寄与した」と説明された。

北米ではCybercab(サイバーキャブ)の生産も開始された。ステアリングもペダルもない完全自動運転専用車両で、ライドシェア事業への投入が前提だ。FSDの精度向上と普及率拡大は、テスラにとってソフトウェア販売にとどまらず、ロボタクシー事業の成否を左右する経営課題でもある。

BYD「God’s Eye」——追加課金なし、全車に載せる

BYDは2025年初頭、高度運転支援システム「God’s Eye(天神之眼)」を発表した。高速道路での自動車線変更、市街地でのナビ連動走行、自動駐車などを統合したシステムで、LiDARを使わずカメラとミリ波レーダーで構成される。

10万元(約200万円)クラスの廉価モデルにも標準搭載する。これがBYDの答えだ。

テスラがFSDで年間数十億ドル規模のソフトウェア収入を狙う一方、BYDは「自動運転は安全装備であり、エアバッグのように全車に付けるべきだ」という立場を取った。追加課金は一切なし。開発コストは車両価格に織り込み、販売台数のスケールで吸収する。業界アナリストの推定では、ADAS関連のハードウェア・ソフトウェアコストは1台あたり5,000〜8,000元(約10万〜16万円)程度とされるが、年間400万台超の販売規模があれば、部品の大量調達で単価を大幅に圧縮できる。実際、God’s Eye発表後の2025年1〜3月期、BYDの国内販売は前年同期比で約60%増加しており、標準搭載が購入の後押しになっている可能性がある。

ロボタクシー分野では、BYDは百度(Baidu)のApollo Goに車両を供給し、Pony.aiとも協業を進めている。Apollo Goは2025年時点で中国11都市以上に展開し、累計乗車回数は1,000万回を超えた。BYDはあくまで車両メーカーとしての立ち位置から自動運転タクシーに関わっており、テスラのように車両・ソフト・サービスを垂直統合する方式とは異なる。

2つの戦略を比較する

項目 テスラ FSD BYD God’s Eye
提供方式 サブスク月額99ドル/一括8,000ドル 全車種標準搭載(追加費用なし)
センサー構成 カメラのみ(Tesla Vision) カメラ+ミリ波レーダー
収益モデル ソフトウェア課金(高マージン) 車両販売価格に内包
対象車種 全車(HW3.0以降) 全車種(廉価モデル含む)
ロボタクシー Cybercab自社開発・垂直統合 Apollo Go・Pony.aiへ車両供給
狙い リカーリング収益・ロボタクシー基盤 商品力向上・価格競争での差別化

両社の違いは、自動運転を「プロフィットセンター」と見るか「コストセンター(だが強力な販売促進策)」と見るかに尽きる。テスラはソフトウェア企業としての評価を市場から得ており、FSD課金はその根拠になっている。BYDは販売台数のスケールを武器に、機能の標準搭載でライバルとの差を広げる。

ただし、テスラのFSD加入率には課題がある。Bloomberg Intelligenceの2025年時点の推計によれば、FSDの利用率は全テスラオーナーの約2割程度にとどまる。残り8割のオーナーは、搭載済みのハードウェアを使わずにいる計算だ。サブスク型は利益率が高い反面、ユーザーが価値を感じなければ収益基盤が広がらない構造的なリスクを抱えている。

日本で今、何が使えるのか

日本市場では、BYDジャパンが2025年にATTO 3・DOLPHIN・SEALの3車種体制で展開を進めており、累計販売台数は約3,000台規模に達したとみられる。God’s Eyeの日本導入時期は未定で、日本仕様のセンサーキャリブレーションや国土交通省の型式認証取得が必要になるため、中国国内と同時というわけにはいかない。

では、今の日本仕様車で何が使えるか。BYDの日本販売モデルにはACC(アダプティブクルーズコントロール)、車線維持支援、衝突被害軽減ブレーキ、ブラインドスポットモニターなどが標準装備されている。God’s Eyeほどの高度な自動走行はできないが、高速道路での長距離運転ではACCと車線維持の組み合わせで十分に疲労軽減効果がある。

テスラの日本車両には「オートパイロット」が標準搭載されており、高速道路でのACC+車線中央維持が利用できる。FSD相当の市街地自動走行は日本未対応だ。日本の道路運送車両法では2023年4月にレベル3(条件付き自動運転)の公道走行が解禁されたが、対象は高速道路の渋滞時など限定的な条件下に限られる。

日本でBYDやテスラの購入を検討しているなら、現時点では両社とも高速道路でのレベル2相当の運転支援が実用的な選択肢になる。God’s EyeやFSDの日本展開は、技術の現地適応と規制緩和の進み具合次第だ。

出典

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BLADE NOTE編集部
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