トヨタ×CATL、インドネシアでHV電池生産へ – 日本の電池サプライチェーンに何が起きているかNEW
トヨタ自動車と中国・CATL(寧徳時代)がインドネシアでハイブリッド車(HV)用電池の共同生産を計画していると36氪が報じた。世界最大の電池メーカーと日本最大の自動車メーカーが東南アジアで手を組む——この動きは、日本の自動車産業における電池調達の構造変化を端的に示している。
トヨタとCATLの接近——その背景
両社の協業自体は新しい話ではない。トヨタは2019年にCATLとの電池調達提携を発表し、BEV・PHEV向けの電池供給を受ける枠組みを構築してきた。今回の報道が示すのは、その関係がHV領域にまで広がったということだ。
インドネシアを生産拠点に選んだ理由は明快で、同国はニッケルの世界最大産出国であり、電池原料の調達で地理的優位がある。インドネシア政府もEV関連産業の誘致に積極的で、税制優遇などの投資インセンティブを整備してきた。トヨタにとっては、ASEAN市場でのHV拡販と原料サプライチェーンの短縮を同時に実現できる立地になる。
パナソニックとデンソー——従来パートナーとの関係
トヨタの電池戦略を読むうえで欠かせないのが、既存パートナーとの関係だろう。パナソニック エナジーとは合弁会社プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)を運営し、国内外でBEV・HV向け電池を生産している。PPESの年間生産能力は約80GWhとされ、主に日本・北米市場向けを担う。デンソーもまた、電動化部品のサプライヤーとしてトヨタグループの中核にいる。
CATLとの提携拡大がこれら日本勢の役割を直接侵食するかといえば、現時点では棲み分けの色が濃い。PPESは日本・北米向け、CATLとの協業は中国市場やASEAN向けが中心という構図になっている。ただ、CATLの年間生産能力は500GWhを超え、世界シェア約37%を握る。PPESとは規模で6倍以上の開きがある。トヨタが調達先を多角化していくなかで、日本の電池メーカーの立ち位置が相対的に変わっていくのは避けられない。
「全方位戦略」が迫るサプライチェーンの再編
トヨタはBEV・HV・PHEV・FCEVの全方位戦略を掲げている。この戦略を支えるには、LFP・NMC・全固体と異なる電池タイプを用途に応じて使い分けなければならない。CATLはLFPの神行電池やCTP 3.0技術の麒麟電池など幅広いラインナップを持ち、トヨタの全方位戦略と相性がいい。
一方、トヨタは全固体電池の2027〜28年実用化を目標に掲げており、ここはパナソニックや出光興産との協業が主軸になる。量産型LFP電池はCATL、次世代の全固体は日本勢——この二軸体制の輪郭がはっきりしてきた。
こうした最適調達の動きはトヨタに限らない。ホンダもCATLとの提携を進め、日産はエンビジョンAESCとの関係を維持しながら中国電池メーカーからの調達も視野に入れている。日本の自動車メーカーが中国電池大手と組む流れは、もはや構造的なものだ。
生産拠点としてのインドネシアにも注目すべき文脈がある。中国国内での過剰生産や欧米の関税リスクを背景に、CATL自身も海外生産を加速させている。韓国のLGエナジーソリューションやサムスンSDIも東南アジアでの投資を拡大中で、この地域は中国・欧州・北米に次ぐ第4の電池生産拠点として存在感を増しつつある。
日本企業にとっての論点は明確で、電池のコモディティ化が進むなか、CATLやBYDといった中国勢のスケールメリットにどう対抗するかに尽きる。全固体電池のような次世代技術で差別化を図る戦略は合理的だが、量産化までの時間軸が長い。その間、HVやPHEVの電池需要は中国メーカーが取り込んでいくだろう。
トヨタ×CATLのインドネシア電池生産は、一つの案件としては小さく映るかもしれない。しかし、日本の自動車産業を支えてきた垂直統合型のサプライチェーンが、電動化時代に水平分業型へ移行しつつある。電池の主導権をめぐる次の焦点は、全固体電池の量産スケジュールに移っている。
出典
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