旭化成カナダ工場延期が映すホンダEV減速 – サプライヤーに広がる連鎖
ホンダのEV戦略見直しが、サプライチェーンの上流にまで波及し始めた。旭化成がカナダ・オンタリオ州で建設中のリチウムイオン電池用セパレーター工場の稼働を、当初予定の2027年半ばから2029年以降へ延期する。主要供給先であるホンダ自身がEV工場の稼働を約2年先送りした以上、需要の裏付けがない工場を動かす理由がない。
旭化成カナダ工場、EV100万台分の生産計画が宙に浮く
旭化成が発表したオンタリオ州の新工場は、セパレーター(電池内部で正極と負極を隔てる絶縁材)を年間約7億平方メートル生産する計画だった。EV約100万台分に相当する規模で、北米のEVシフトを見越した大型投資だ。
ところが、この工場にはホンダが25%を出資している。そのホンダがオンタリオ州のEV工場稼働を2028年から約2年延期すると発表済みだ。最大の顧客が「まだ要らない」と言っている状態では、工場を予定通り立ち上げても製品の行き先がない。旭化成はホンダ以外の供給先でもEV需要の大幅な減退に直面しており、延期は不可避の判断だった。
日本勢のEV投資に連鎖するブレーキ
ホンダと旭化成の件は孤立した事例ではない。同日の報道では、日産が長期ビジョンで車種を2割削減し主力モデルへ投資を集中する方針を打ち出した。完成車メーカーの投資抑制がサプライヤーの計画変更を呼び、それがさらに素材メーカーの工場延期につながる。自動車産業の「川上」から「川下」まで、EV投資の減速が連鎖的に広がっている構図だ。
中国EVメーカーとの投資姿勢の落差
日本勢が投資にブレーキを踏む一方、中国のEVメーカーは真逆の動きを見せている。BYDは2024年の研究開発費が約500億元(約1兆円超)に達し、前年比でさらに積み増した(BYD 2024年度決算報告より)。CATL、Zeekr、Xpengといった企業も、800Vアーキテクチャ対応や次世代バッテリーへの投資を加速させている。
背景には市場規模の違いがある。中国は世界最大のEV市場で、中国汽車工業協会の統計によると2024年のBEV販売台数は約700万台。対して日本は約9万台。中国メーカーにとって投資はすでに回収フェーズに入りつつあるが、日本メーカーはまだ種まきの段階にある。需要が見えなければ種をまく手も止まる。
サプライチェーンの垂直統合も大きい。BYDはバッテリーからモーター、半導体まで内製化を進めており、外部サプライヤーの動向に左右されにくい。旭化成のような素材メーカーが顧客の都合で工場計画を変更せざるを得ない日本の産業構造とは、リスクの所在が根本的に異なる。
セパレーター市場、日本勢の生き残り戦略
旭化成は北米向けセパレーターを当面日本から輸出する方針だ。ただ、東レや住友化学もセパレーター事業を展開しており、限られたパイを奪い合う構図になりかねない。EV需要が本格回復するまでの「つなぎ」として、蓄電池(ESS)向けや産業用途への転用が選択肢に挙がるが、車載用ほどの数量は見込めない。
ホンダの0シリーズは2026年以降に北米投入を予定しているが、カナダ工場の延期が示すように、計画通りに需要が立ち上がる保証はない。北米のEV普及ペース次第では、2029年という新たな目標時期すら再延期になりうる。旭化成に限らず、日本の素材・部品メーカーは、顧客の投資判断に振り回されない事業ポートフォリオの構築を迫られている。
出典
- EV関連、米で供給網縮小 旭化成、加の電池材料工場延期 ホンダ減速の影響拡大(Response・2026年4月15日付)
- BYD 2024年度決算報告(BYD公式)
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