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BYDがカナダに20店舗一斉展開 – 北米市場攻略の新ルート

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BYD: BYDがカナダに20店舗一斉展開 – 北米市場攻略の新ルート
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カナダ全土に20店舗——BYDが北米市場への再挑戦で選んだのは、関税の壁が立ちはだかる米国ではなく、その隣国だった。

トロント先行、3大都市圏を同時攻略

BYDは2026年中にカナダ国内で20カ所のディーラーを開設すると発表した。Globe and Mail紙によれば、オンタリオ州トロントではすでに3拠点の候補地が交渉段階にある。さらにケベック州モントリオール、ブリティッシュコロンビア州バンクーバー、アルバータ州カルガリーにも出店を計画している。

EV普及率が必ずしも高くないオンタリオ州を初期拠点に含めた判断は意外だ。同州のEV市場シェアは6.5%で、BC州の17.1%やケベック州の17.7%を大きく下回る。自動車産業の労組が強い地域でもあり、中国メーカーにとっては逆風が吹きやすい土地柄といえる。ただし、オンタリオ州には遊休状態の自動車生産設備が存在しており、BYDが将来的に現地生産を視野に入れているなら、拠点としての合理性はある。

極寒のアルバータ州で「寒冷地性能」を武器に

カルガリーへの進出には別の狙いがある。アルバータ州は厳冬期にマイナス30度を下回ることも珍しくなく、EVの市場シェアはわずか4%にとどまる。寒冷地ではバッテリー性能が低下するという従来のEVの弱点が、消費者の購入をためらわせてきた。

しかしBYDの最新バッテリーは、マイナス30度の環境下でプレコンディショニングなしに12分で97%まで急速充電できる性能を実証している。航続距離の延長と合わせれば、これまでEVを敬遠してきた寒冷地の消費者層を新たに取り込む余地が生まれる。

カナダの充電インフラ事情も、BYDにとっては商機になりうる。現在、カナダ国内のDC急速充電ステーションは約2,700カ所あるが、350V以上の高出力充電に対応するのはそのうち約8%の237カ所にすぎない。人口密度が低く広大な国土を持つカナダでは、充電網の整備が慢性的な課題だ。BYDが自社のフラッシュチャージングステーションを迅速に展開できれば、車両販売と充電インフラの両輪で市場を押さえる戦略が成立する。

BEVだけではない——PHEVとピックアップの布石

カナダ市場で売れるのはBEVだけとは限らない。BYDは最近、ピックアップ型PHEVの「Shark」をアップデートし、2リッターのレンジエクステンダーを搭載した高耐久バージョンを追加した。モーター出力は350kW、トルクは700Nmに強化され、牽引能力も向上している。広大な国土で長距離移動やトレーラー牽引の需要があるカナダでは、こうしたPHEVモデルが現実的な選択肢として受け入れられる素地がある。

供給ルートも多様化が進む。現在カナダは中国からのEV輸入を年間49,000台に制限しており、数年後に70,000台へ引き上げる方針だ。しかしBYDはブラジル、タイ、インドネシアなど中国国外の生産拠点を急速に拡大しており、これらの工場からカナダへ輸出する道も開ける。さらに日産がメキシコ工場の売却を検討しており、BYDが有力な買い手として名前が挙がっている。メキシコやカナダでの現地生産が実現すれば、輸入枠の制約を根本的に回避できる。

迂回路の先に見える米国市場

カナダ進出の戦略的意味は、カナダ単体の市場規模にとどまらない。規制の相互認証により、カナダで承認を受けた車両は米国の安全基準も満たす。BYDは関税導入前にカナダで複数モデルの認可を取得済みとされ、以前から北米市場を見据えた準備を進めていたことがうかがえる。

直接的な米国販売は現時点で高い関税障壁に阻まれているが、カナダ市場で流通するBYD車が中古車として米国に渡る経路も残る。また、北米基準に適合した車両をカナダやメキシコの工場で生産する体制が整えば、保護主義的な政策で排除する根拠も薄れていく。

20店舗の一斉展開は、単なるテスト進出ではない。部品供給網、サービス研修、アフターサポート体制まで含めた本格的な市場参入だ。CleanTechnicaの調査によれば、カナダのEV購入検討者の多くは中国ブランドに対して開放的な姿勢を示しており、性能と価格で優位に立てば市場を獲得できる環境は整っている。

日本でもBYDは2025年秋発売のRACCOを軸に販売拡大を図っている段階だが、カナダでの大規模展開が成功すれば、右ハンドル圏を含むグローバル戦略全体に弾みがつく。カナダ向けに投入されるSharkやSEALION 7といったモデルが右ハンドル仕様で展開される場合、日本市場へのラインナップ拡充にもつながる。また、カナダでの積極的な価格戦略が奏功すれば、日本での価格設定にも競争力を持たせやすくなる。北米という巨大市場への足がかりを、BYDは着実に築きつつある。

出典

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BLADE NOTE編集部
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