JAC、ファーウェイNewcoolに出資検討 – 中国EV連合の拡大
ファーウェイの車載事業会社「Newcool(引望)」に第3の主要株主が加わる見通しとなった。安徽省を本拠とする江淮汽車(JAC)が出資を検討していることを上海証券取引所への開示で明らかにした。実現すればSeres(賽力斯)、Avatr(阿維塔)に続く完成車メーカー出身の主要株主となり、ファーウェイ主導の中国EVスマート化エコシステムが一段と厚みを増す。
1150億元評価のオープンプラットフォーム
JACは出資意向のみを開示しており、具体的な投資額・取引方式・価格は両社が交わす最終契約で決定する。取引完了後もJACの連結財務諸表の範囲は変わらず、Newcoolは持分法適用会社として位置づけられる見通しだ。
Newcoolは2024年1月、ファーウェイが100%出資で設立したスマートカー事業の受け皿会社にあたる。同年中にSeresとAvatrがそれぞれ10%を115億元(約16.8億ドル)で取得し、企業価値は1150億元と算定された。現状の株主構成はファーウェイ80%、Seres10%、Avatr10%。JACの取得比率と既存株主の希薄化幅は明らかになっていないが、完成車メーカー3社が並ぶ構図が見えてくる。
| 株主 | 持分 | 取得時期 | 取得額 |
|---|---|---|---|
| ファーウェイ | 80% | 2024年1月(設立) | — |
| Seres | 10% | 2024年 | 115億元 |
| Avatr | 10% | 2024年 | 115億元 |
| JAC | 未定 | 交渉中 | 未定 |
設立当初からファーウェイはNewcoolを「外部資本を受け入れるオープンプラットフォーム」と位置づけてきた。ティア1サプライヤーが顧客企業を株主として迎える例は珍しく、自動車業界の垂直関係を逆向きに組み替える設計と言える。
ADASとHarmonyOSを束ねる戦略中核
Newcoolが管轄する事業領域は広い。ADAS「乾坤(Qiankun)」、車両制御コンポーネント、車載照明、車両クラウド、車内OSのHarmonySpace。いずれもファーウェイがクルマ向けに磨いてきたソフト・ハード資産だ。米制裁下で完成車メーカー化を避けつつ、ハイテク部品・ソフトウェアのサプライヤーとして地位を確立する戦略の中核に位置する。
とりわけ「乾坤ADS」は、中国市場で都市部自動運転支援の有力ソリューションに育っている。Newcoolはファーウェイ陣営内の囲い込みにとどまらず、技術ライセンス先として他陣営の完成車メーカーへの供給も視野に入る位置にあり、株主拡大は外販戦略の信頼性を高める意味も持つ。
Maextroで実績、JACが資本面でも合流
JACとファーウェイはすでに超高級ブランド「尊界(Maextro)」で協業実績を積んできた。第1弾モデルのMaextro S800は2025年5月、起点価格70万8000元(約1500万円)で発売された。中国メーカー製のフラッグシップセダンとしてメルセデス・ベンツのSクラスやマイバッハに対抗する立ち位置で、2025年末までに累計1万台が生産ラインを離れている。
JACにとってMaextroは単なるOEM案件ではなく、グループ全体のブランド階層を底上げする戦略商品だ。今回のNewcool出資は、JACがファーウェイ陣営における立ち位置を資本面で正式化する動きにあたる。Seresは「問界(AITO)」、Avatrは長安汽車・寧徳時代との合弁、JACは尊界と、いずれもファーウェイのスマート化技術を全面採用したブランドを抱える。3社が株主として連なれば、ハードウェア・ソフトウェア・ブランド戦略を共有する垂直連合体の輪郭が浮かび上がる。
BYD型垂直統合に対抗する第2勢力
中国EV市場では、比亜迪(BYD)が電池・半導体・モーターまで内製する垂直統合モデルで先行している。一方ファーウェイは自らクルマを作らず、ADAS・OS・クラウドを束ねる「水平分業の盟主」として陣営を拡大してきた。Newcoolの株主拡大は、第2勢力の組織化が一段進んだ象徴と言える。
日本の自動車業界にとっても示唆は大きい。中国市場で販売する車種にファーウェイの車載技術を組み込む流れは日系メーカーにも広がりつつあると報じられており、サプライヤーとしてのファーウェイから買うのか、Newcool株主として陣営に連なるのか、完成車メーカーは中国事業の体制設計を改めて問われる局面に近づいている。Newcoolの株主構成は、中国EV業界の勢力図そのものを映す指標になりつつある。
JACのNewcool出資が成立する時期は現時点で明らかになっていない。
出典
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