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ロボタクシー市場2035年に24兆円予測 – 商用化元年の現在地と課題NEW

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EV市場: ロボタクシー市場2035年に24兆円予測 – 商用化元年の現在地と課題
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2035年に24兆円——。調査会社カウンターポイントリサーチが発表したロボタクシー市場の成長予測は、自動運転業界に改めて巨大な商機を示した。だが、その道のりは予測ほど平坦ではない。2024年に武漢で頻発したBaidu「Apollo Go」の運行トラブルは、技術と社会実装のあいだに横たわる溝を浮き彫りにした。

10年の開発期を経て「収益化フェーズ」へ

カウンターポイントリサーチの予測によると、ロボタクシーのサービス市場は2035年に1680億ドル(約24兆円)規模に達し、運用フリートは360万台に拡大する。2026年を「実証から本格商用化への転換点」と位置づけ、過去10年にわたる開発投資がようやく回収段階に入るとの見立てだ。

この予測の背景には、主要プレイヤーの動きがある。米国ではWaymoがサンフランシスコやフェニックスでの商用運行を拡大し、Teslaもロボタクシー専用車両「Cybercab」の投入を表明。中国ではBaiduのApollo Goが武漢・北京など複数都市で累計700万回以上の配車実績を積み上げてきた。都市単位の実証を超え、面的な展開へ踏み出す段階に来ている。

武漢のApollo Goが突きつけた「現実」

ただし、数字の華やかさと現場の実態には距離がある。

2024年、武漢市内でApollo Goの車両が交差点で停止したまま動かなくなる事例や、周囲の交通を混乱させるトラブルが相次いで報告された。SNSには立ち往生するロボタクシーの動画が拡散し、「無人運転は本当に安全なのか」という市民の疑問が噴出。武漢市当局も運行区域や台数の管理強化に動いた。

こうした障害は技術的には「エッジケース」と呼ばれる想定外の状況への対応不足から生じている。工事現場の急な車線変更、歩行者の予測不能な横断、悪天候下のセンサー精度低下。実験環境では再現しにくい事象が、大規模運用になって初めて顕在化する。商用化とは、こうした長い尾を持つリスクを1件ずつ潰していく地道な作業だ。

「クルマを売る」から「移動を運用する」への転換

カウンターポイントリサーチが指摘するもう一つの重要な構造変化は、自動車産業のビジネスモデルそのものの転換だ。ロボタクシーが普及すれば、自動車は「消費者に売る製品」から「事業者が運用する資産」へと性格を変える。

この変化がEVメーカーに与える影響は一様ではない。BYDはフリート向け車両の供給で先行した実績を持つ。電動タクシー専用モデル「e6」は深圳を皮切りに中国各都市やシンガポール、南米など海外市場にもタクシー・ライドシェア向けに数万台規模で納入されてきた。2024年にはインテリジェントドライビングシステム「DiPilot」の高度化を加速させ、高速道路でのNOA(Navigate on Autopilot)機能を漢・唐・宋L等の主力モデルに展開し始めた。ただし、都市部での完全無人運転には至っておらず、ロボタクシー事業への直接参入よりも、フリート向け車両供給プラットフォームとしてのポジションを固める戦略が現実的とみられる。テスラが自社でライドヘイルネットワークの構築を目指すのとは対照的なアプローチだ。

一方、車両販売に依存する従来型メーカーは、フリート向け供給という新たな競争軸への適応を迫られる。1台あたりの利益率より、稼働率と耐久性が重視される世界では、製品設計の思想自体が変わってくる。

規制で先行する中国、一進一退の米国

市場予測の常として、1680億ドルという数字は一定の前提条件のもとに成り立っている。各国の規制整備が順調に進むこと、技術的課題が段階的に解決されること、そして消費者の受容が広がること。どれか一つが停滞すれば、タイムラインは容易にずれる。

以下に中国・米国・日本の主要プレイヤーと進捗状況を整理する。

国・地域 主要プレイヤー 展開都市数 許認可・規制状況 商用化ステージ
中国 Baidu Apollo Go、Pony.ai 10都市以上(2025年末65都市目標) 北京・上海・武漢等で公道走行条例整備済み 有料商用運行中
米国 Waymo、Tesla(予定) 4都市(SF・フェニックス・LA・オースティン) 州ごとに許可。Cruise事故で規制議論再燃 Waymo商用運行中、他は実証段階
日本 ホンダ、ティアフォー 東京・大阪で実証中 2023年道交法改正でL4解禁 2026年商用化目標(ホンダ)

中国は規制面で先行しており、報道によるとBaiduは2025年末までに65都市への展開を目標に掲げている。米国ではカリフォルニア州がWaymoに完全無人運行の許可を出す一方、General MotorsのCruiseが事故を契機に運行停止に追い込まれるなど、一進一退が続く。

日本の自動運転タクシーはどこまで来たか

日本国内では2023年の道路交通法改正でレベル4自動運転が解禁され、動きが出始めている。2025年の大阪・関西万博では、会場内でレベル4自動運転車両の運行が計画されており、一般来場者が無人運転車両に乗る国内初の大規模機会になる。東京都心部でもティアフォーやホンダが自動運転タクシーの実証実験を進めており、ホンダは2026年の都内での商用サービス開始を目指している。

トヨタはWoven Cityでの自動運転技術の検証を続けるほか、米国ではロボタクシー企業May Mobilityへの出資を通じて運行データや安全基準の知見を取り込む狙いだ。ただし、日本の都市部でロボタクシーを本格展開するには、インフラ整備と社会的合意形成の両面でまだ距離があり、中国や米国と比べると2〜3年の遅れがあるとの指摘もある。

2035年の24兆円市場が実現するかどうかは、結局のところ「武漢で起きたような問題」を業界全体でどれだけ早く克服できるかにかかっている。直近では、Waymoが2025年3月に東京での走行データ収集を開始し、ホンダの商用化目標も2026年に迫る。日本の読者にとっても、ロボタクシーは「海の向こうの話」ではなくなりつつある。

出典

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BLADE NOTE編集部
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