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仰望U8L・U9 Xtreme特別仕様が示すBYDの超高級戦略 – レクサス型ブランド構築との共通点

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仰望U8L・U9 Xtreme特別仕様が示すBYDの超高級戦略 – レクサス型ブランド構築との共通点

2,977馬力のスーパーカーと1,900万円超のラグジュアリーSUV——BYDの高級サブブランド「仰望(Yangwang)」が2026年北京モーターショーで披露した2台の特別仕様車は、中国EVメーカーによるブランド戦略の新たな到達点を示している。

U8L「頂蒼エディション」——移動空間としての贅沢

仰望が発表したU8Lの特別仕様「頂蒼(Ding Cang)エディション」は、ロングホイールベース版U8Lをベースに、3列シートを廃して2列4人乗りとした室内特化モデルだ。約5.3立方メートルのキャビンを4席だけで使い切る構成で、後席の居住性を極限まで追求する。

仰望の販売部門マネージャー胡暁強氏は、キャビン体験の向上に加え、限定オーナー向け特典やパーソナライズオプションの拡充に注力する方針を明かした。現行U8Lの価格帯は128万〜130万元(約1,872万〜1,900万円)。頂蒼エディションはこれをさらに上回る価格設定になるとみられる。

パワートレインは既存U8Lと共通で、BYDのe4プラットフォームに四輪独立モーターを搭載。800V EREV構成は合計880kW(1,180馬力)のモーター、56.58kWhのLFPバッテリー、200kW(268馬力)の2.0L直4ターボ発電エンジンを組み合わせる。CLTC基準でEV航続230km、総合航続1,205km。フラッシュ充電では10%から97%まで約7分で到達する。

U9 Xtreme——2,977馬力・限定30台の頂点

もう1台の主役、U9 Xtremeは仰望のスーパーカーU9の性能強化版だ。CarNewsChinaによると、モーター出力を通常版の960kW(1,287馬力)から2,220kW(2,977馬力)へと2倍以上に引き上げた。この数字は、ブガッティ・ボリードの1,825馬力やリマック・ネヴェーラの1,914馬力を大幅に上回り、量産・限定問わず公道走行可能な車両としては前例のない領域に踏み込んでいる。

ニュルブルクリンク7分未満の周回タイム、量産車最高速度496.22km/h。ブラック&ゴールドの専用塗装にフロントスプリッター、フード、ドアのゴールドアクセント。世界限定30台。

1200V版e4プラットフォームを採用し、通常版U9は80kWhのLFPバッテリーでCLTC航続450km、価格は180万元(約2,633万円)からとなっている。

トヨタがレクサスで成功した「上方浸透」戦略

仰望の存在意義は、月間300台程度の販売台数にはない。BYDグループ全体のブランドイメージを引き上げる「ハロー効果」にある。この構図は、トヨタがレクサスで実行した戦略と本質的に同じだ。

1989年にレクサスが北米で立ち上がったとき、トヨタの大衆車イメージを塗り替えることが最大の狙いだった。LFAのようなスーパーカーは採算度外視でも、「トヨタグループにはこれを作れる技術がある」というメッセージが全車種の価値を底上げする。ヒュンダイがジェネシスを独立ブランド化した2015年の判断も、同様のロジックに基づく。韓国の大衆車メーカーという認識を変えるには、量販車の改良だけでは不十分だった。

BYDが仰望で仕掛けているのは、このアプローチのEV版だ。ただし速度が違う。レクサスはブランド確立に10年以上を要したが、仰望はU8の水中走行デモやU9のニュルブルクリンク記録など、SNS時代に最適化されたスペクタクルで短期間での認知獲得を狙う。2,977馬力という数字自体が、技術力の広告として機能している。日本ではATTO 3やDOLPHINといった300万〜500万円台のモデルで市場参入を進めるBYDだが、仰望の存在は「低価格の中国車」というイメージを上書きする武器になり得る。

中国高級EV市場の「カスタマイズ競争」

仰望の動きは孤立した事例ではない。中国市場では、Rox MotorのPolestones Royal EditionやLi AutoのL9 Livisなど、カスタマイズ仕様の高級SUVが相次いで登場している。価格競争が限界に達しつつある中国EV市場で、各社が高付加価値セグメントへ軸足を移し始めた。

仰望にとってのカギは、頂蒼エディションのようなパーソナライズ路線で車両単価の利益率を確保しつつ、ブランドの存在感をBYD全体に波及させることだ。U7ラグジュアリーセダン(EV/PHEV)も含めた仰望のラインナップ拡充は、BYDが「電池を作れるメーカー」から「技術で高級を定義するブランド」へ移行するための具体的なステップとして進んでいる。

北京モーターショーでの2台は、仰望が量で勝負するブランドではないことを改めて印象づけた。BYD全体の販売台数が年間400万台を超える規模に成長した今、仰望に求められる役割は明確だ——グループの「顔」として技術の天井を示し続けること。限定30台のU9 Xtremeと、パーソナライズに振り切った頂蒼エディション。仰望が次に問われるのは、この話題性を日常的なブランド体験——販売網、アフターサービス、オーナーコミュニティ——にどう接続するかだろう。

出典

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BLADE NOTE編集部
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