CATL製109kWhバッテリー搭載 – AUDI E7Xが示す欧州メーカーの中国電池依存
109kWh——中国CATLが供給するこの大容量バッテリーパックが、新型AUDI E7Xの心臓部に収まる。SAIC(上汽集団)との合弁で生まれた「四文字ロゴ」のAUDIブランドが、5月8日から予約受付を開始する第2弾モデルだ。だが本質的な論点は、欧州プレミアムブランドが中国製バッテリーにどこまで依存を深めているかだ。
109kWhセルの技術的意味
E7Xに搭載されるCATL製109kWhバッテリーパックは、CLTC基準で751kmの航続距離を実現する。900Vの高電圧アーキテクチャを採用しており、急速充電性能も現行世代のトップクラスに位置する。全長5,049mm、ホイールベース3,060mmのSUVボディにこの容量を詰め込むには、セルレベルでのエネルギー密度とパック設計の両面で高い技術力が必要になる。
CATLは2024年以降、NMC系セルで300Wh/kgを超えるエネルギー密度を量産レベルで達成しつつある。109kWhという数字は、テスラ Model S Plaidの100kWhやBYD漢の85.4kWhを上回る。大容量化と900V対応を同時に実現している点は、CATLのセル技術とBMS(バッテリーマネジメントシステム)の成熟度を示している。
パワートレインの全体像
CarNewsChinaの報道によると、E7Xは単モーターとデュアルモーター構成を用意する。デュアルモーター仕様はフロント200kW+リア300kWの合計500kW(670hp相当)で、0-100km/h加速は3.97秒。オールアルミシャシーにquattroインテリジェントAWDを組み合わせる。
| 項目 | シングルモーター | デュアルモーター |
|---|---|---|
| 最高出力 | 300kW(402hp) | 500kW(670hp) |
| 駆動方式 | — | quattro AWD |
| 0-100km/h | 未公表 | 3.97秒 |
| バッテリー容量 | 109kWh(CATL製) | |
| 航続距離(CLTC) | 751km | |
| 充電電圧 | 900V | |
先進運転支援にはMomentaの最新世代フライホイール大規模モデルを採用し、LiDARも搭載する。車内は59インチのウルトラワイドディスプレイにQualcomm Snapdragon 8295チップを載せ、CarPlay対応やOTAアップデートにも対応。ハードウェアからソフトウェアまで、中国サプライチェーンへの依存が一目で分かる構成だ。
欧州ブランドの中国バッテリー依存が止まらない理由
Audiに限った話ではない。BMW iX3はCATL製セルを搭載し、メルセデスEQSもCATLからの調達に依存する。SNE Researchの推計によれば、CATLの世界EV用バッテリー市場シェアは2025年時点で約37%に達し、欧州メーカー向け供給量は2022年比で倍増している。Volkswagenグループは2024年にザルツギッターのバッテリー工場の生産開始を延期し、スペイン・バレンシア工場の計画も凍結。自社製造の拡大よりも、CATLとの合弁工場(ドイツ・テューリンゲン州)への依存を強める方向に舵を切った。
欧州でのセル製造コストは中国の1.5〜2倍とされる。エネルギー価格、人件費、原材料調達の全てで中国勢が優位に立つ。加えて、CATLやBYDが持つLFPからNMC、さらにはナトリウムイオン電池まで幅広い技術ポートフォリオは、欧州メーカーが短期間で追いつけるものではない。
SAIC-Audiの「四文字ロゴ」モデルは、従来の四環Audiとは別ラインで中国市場専用に展開される。中国のプラットフォーム、中国のバッテリー、中国のADAS技術。もはやAudiのバッジが付いた中国車と言ったほうが実態に近い。
先行モデルE5の苦戦が映す現実
ただし、ブランドと技術を揃えれば売れるわけではない。AUDIブランド初のモデルE5 Sportbackは2025年9月の発売直後に30分で1万件超の注文を集めたと報じられたが、その後の月販は2,000台を超えたのが3月の1回のみ。初期の話題性と実際の販売には大きな乖離がある。
本家の四環Audi(一汽-大衆Audi)も中国市場で販売店の閉鎖が相次いでいる。中国EV市場ではBYD、テスラ、そしてNIO・Xpeng・Zeekrといった新興勢力がシェアを固めており、欧州ブランドが価格競争力で劣る構造は変わっていない。E7Xが109kWhの大容量バッテリーと900V充電で差別化を図ろうとしているのは、こうした厳しい市場環境を映している。
日本のEVにも広がるCATLの影
中国製バッテリーへの依存は欧州だけの話ではない。日本でもトヨタがBEV向けにCATLからのセル調達を拡大し、ホンダは中国合弁を通じてCATL製バッテリーを搭載したEVを展開している。日産はエンビジョンAESCを通じて内製路線を維持するが、コスト面での中国勢との差は埋まっていない。Audiの日本展開においても、2025年に投入されたQ6 e-tronを皮切りにEVラインナップの拡充が進むが、その電池セルの調達先をたどれば中国にたどり着く構図は同じだ。日本の消費者が購入するEVの中身が、どこまで中国のサプライチェーンに依存しているか——E7Xはその縮図でもある。
E7Xの正式発売は2026年上半期中の予定。価格次第では中国市場での存在感を取り戻す一手になりうるが、CATLの技術に依存しながらCATLのバッテリーを積むBYDやZeekrと競争することになる。E5の初動が示したように、話題性と継続的な販売は別物だ。E7Xが月販でどの水準を維持できるか、5月8日の予約開始後の数字が最初の試金石になる。
出典
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