固体電池に13億ドル集中 – 融資データが示す実用化の現在地NEW
13億ドル——。2025年から2026年第1四半期にかけて、全固体電池関連の融資総額がこの大台を突破した。中国メディア36氪の報道によるもので、件数は57件に上る。EV用バッテリーの「次の本命」とされる固体電池に、世界の投資マネーが急速に流れ込んでいる。
投資加速の背景にある技術的ブレークスルー
固体電池は液体電解質を固体に置き換えることで、エネルギー密度の大幅な向上と安全性の確保を両立する技術だ。現行の三元系リチウムイオン電池(NMC)が250〜300Wh/kgであるのに対し、固体電池では400Wh/kg以上が視野に入る。航続距離1,000km級の実現も理論上は可能とされている。
ただし、これまでは量産コストと製造歩留まりの壁が立ちはだかってきた。57件・13億ドルという融資規模は、こうした製造課題の解決に一定のめどが立ちつつあることを資金の出し手が判断し始めた証左と読める。
中国勢は「半固体」で先行する
注目すべき動きとして、中国の商用車大手・一汽解放(FAW Jiefang)が半固体電池を次世代車両プラットフォームに採用する計画を明らかにしている。全固体ではなく「半固体」という点がポイントで、中国メーカーの多くは完全な固体化の前段階として、電解質の一部を固体化した半固体電池の量産を先に進める戦略を採っている。
NIOやCATLといった企業も半固体電池の車載実装を進めており、中国では2025年時点ですでに半固体電池搭載車が市販されている。「全固体」の量産化を待たずに段階的に技術を投入するこのアプローチは、研究開発費を回収しながら次のステップへ進む現実的な手法だ。
日本メーカーの開発スケジュールとの比較
日本勢は全固体電池の開発で先行してきた自負がある。トヨタは2027〜28年の実用化を目標に掲げ、日産は2028年の量産開始に向けてパイロット工場の建設を進めている。いずれも「一気に全固体」を目指すフルスペック路線だ。
| メーカー | 技術アプローチ | 目標時期 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| トヨタ | 全固体(硫化物系) | 2027-28年 | 航続1,000km級、フルスペック志向 |
| 日産 | 全固体 | 2028年 | パイロット工場建設中 |
| 一汽解放 | 半固体 | 次世代プラットフォーム | 商用車から先行投入 |
| NIO等 | 半固体 | 2025年〜市販済 | 段階的実用化 |
13億ドルの融資が示すのは、全固体に至る道筋が一本ではないという現実だ。中国勢が半固体で実績を積み上げ、量産ノウハウとコストデータを蓄積している間に、日本勢の「完成形を一発で出す」戦略が時間的に間に合うかどうか。融資データの急増は、半固体を含む固体電池全体のエコシステムが臨界点に近づいていることを物語っている。
融資13億ドルの内訳をどう読むか
57件で13億ドルということは、1件あたり平均約2,300万ドル。巨額の設備投資を要する量産フェーズの資金というよりは、パイロットライン構築や技術実証段階の投資が中心と推測できる。裏を返せば、量産投資フェーズに移行すればさらに桁違いの資金が動く可能性がある。
現行のLFP(リン酸鉄リチウム)電池はセル単価が大幅に下がり、中国BEVの約7割が採用するまでに普及した。固体電池がLFPと同等のコスト競争力を持つには時間がかかるが、高性能セグメント——長航続・高出力が求められるプレミアムEVや商用車——から段階的に置き換えが進むシナリオが現実味を帯びてきた。
トヨタや日産が目標とする2027〜28年は、この融資トレンドが量産投資に転換するタイミングとほぼ重なる。日本メーカーの技術的優位が市場投入のスピードで相殺されるのか、それとも「後出し」の完成度で差別化できるのか。答えが出るまで、あと2年ほどだ。
出典
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