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中国、ロボタクシー新規許可を凍結 – バイドゥ武漢障害が規制転換の引き金にNEW

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中国、ロボタクシー新規許可を凍結 – バイドゥ武漢障害が規制転換の引き金に

中国の路上で「無人タクシー」が立ち往生する——2025年3月末に武漢で起きたバイドゥのロボタクシー大規模障害は、中国当局の自動運転政策を一変させた。世界最大の自動運転市場で何が起き、今後どう動くのか。

武漢で何が起きたのか

2025年3月31日夜、湖北省武漢市内の道路で、バイドゥの自動運転タクシーサービス「Apollo Go(蘿蔔快跑)」の車両が相次いで走行不能に陥った。交通量の多い高架道路上で停止した車両もあり、乗客が車内に取り残される事態となった。

Apollo Goのカスタマーサービスは当時、現地メディアに対し「ネットワークの問題が走行システムの異常を引き起こした」と説明している。業界関係者の間では、米アルファベット傘下のWaymoが2024年末に米国で経験したケースと同様、安全性のセルフチェック機構が作動したとの見方が出ている。

武漢はApollo Goにとって最大の拠点だ。同市では約400台の自動運転車両が稼働し、2024年時点で1日あたり数千件の配車をこなしていた。サービスエリアは武漢経済技術開発区を中心に約3,000平方キロメートルに及び、人口1,100万人超の大都市で日常的な移動手段として浸透していた。障害発生後、中国のSNS「微博(Weibo)」では現場動画が相次いで投稿され、国営メディアも翌日には安全管理体制を問う報道を展開した。

3省庁が緊急会合、新規許可を凍結し株価も下落

事態を重く見た中国当局は迅速に動いた。Bloombergが4月23日に報じたところによると、工業情報化部(MIIT)を含む3つの政府機関が、ロボタクシーや自動運転の試験プログラムを実施している都市の担当者を集めた会合を今月開催した。

会合で規制当局は、各地方政府に対して包括的な自己点検の実施と安全監視体制の強化を求めた。そして新規の自動運転ロボタクシー許可の発行が停止された。この凍結措置により、自動運転企業は新たなロボタクシーの車両追加、新規テストプロジェクトの開始、新都市への展開ができなくなった。凍結がいつまで続くかは明らかになっていない。

凍結報道を受け、バイドゥの香港上場株は約2%下落した。競合のPony AI(小馬智行)は6%安、WeRide(文遠知行)は3%安と、影響は業界全体に広がった。バイドゥの武漢でのロボタクシー運行自体も、当局の調査が進む間は停止されているとされる。バイドゥはApollo Go事業を2025年中の黒字化目標として掲げており、凍結の長期化は同社の収益計画を直撃する。中国全体のロボタクシー稼働台数は2024年末時点で推定2,000台超に達しており、市場の成長軌道そのものが問われる局面だ。

段階的緩和から急転換、規制の転換点

中国はこれまで、自動運転技術の商用化を世界に先駆けて推進してきた。2023年には北京、上海、広州、深圳、武漢など主要都市が相次いでロボタクシーの商用運行を認可。2024年にはバイドゥが武漢で完全無人(セーフティドライバーなし)の運行許可を取得し、規制緩和は加速度的に進んでいた。

この流れが今回、急反転した。Apollo Goの大規模障害は業界でもまれなケースとされ、技術の実用化スピードと安全管理体制のギャップを突きつけた格好だ。影響はバイドゥだけにとどまらない。Pony AIは深圳や広州での運行拡大を計画していたほか、WeRideはアラブ首長国連邦など中東への進出も進めている。中国国内の規制強化が長引けば、各社が海外展開に一層シフトする可能性もある。

ホンダのレベル4計画にも波及か——ネットワーク障害という盲点

日本では2023年4月の改正道路交通法施行でレベル4(特定条件下での完全自動運転)が解禁され、ホンダが2026年中に都内でのレベル4自動運転タクシーの商用サービス開始を目指している。ティアフォーも複数の自治体と連携し、公道での自動運転実証を重ねている段階だ。

日本の規制は中国と比べて慎重で、運行設計領域(ODD)の厳格な定義や遠隔監視体制の義務化など、段階的なアプローチを取っている。しかし、武漢の事例が浮き彫りにしたのは、ネットワーク障害のような外部要因で車両が一斉に停止するリスクだ。現行の国土交通省「自動運行装置の安全基準」では、車両単体の機能安全やサイバーセキュリティに関する要件は定められているが、通信途絶時に数百台規模の車両が同時停止するシナリオへの対処——たとえばネットワーク冗長性の具体的な要件や、一斉停止時の交通制御手順——は明確に規定されていない。ホンダやティアフォーが商用展開を進めるうえで、この「フリート全体のレジリエンス」は制度設計の具体的な穴として残っている。

バイドゥの障害に関する技術報告書は5月中にも公開されるとみられる。そこで示される障害の根本原因と再発防止策の内容が、中国当局の凍結解除条件を形作るだけでなく、日本を含む各国の自動運転安全基準の次の改定に直接反映される可能性が高い。

出典

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BLADE NOTE編集部
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