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テスラFSD、HW3切り捨てで見えた自動運転競争の現実NEW

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テスラFSD、HW3切り捨てで見えた自動運転競争の現実

累計走行距離150億km超——テスラのFSD(Full Self-Driving)が積み上げてきた数字は圧倒的だ。だが、その裏側で、同社は既存ユーザーに厳しい現実を突きつけている。イーロン・マスク氏は、旧世代のHW3(Hardware 3)チップでは「監視なしFSD」を実現できないと認めた。数十万台規模の既存車両が、ソフトウェアの進化から取り残されることになる。

FSD V14.3配信とHW3の限界

テスラは2026年4月、北米市場で最新のFSD V14.3を顧客車両へ配信した。強化学習フェーズを再設計し、いわゆるロングテールの走行シナリオ——市街地での複雑な合流や歩行者の飛び出しなど——への対応力を向上させた。累計走行距離は93.8億マイル(約151億km)を突破し、うち33.7億マイルが市街地走行だ。

一方で、マスク氏はHW3チップ搭載車では監視なし(Unsupervised)のFSDを動作させられないことを明言した。HW3は2019年から搭載されてきたチップで、当時マスク氏自身が「完全自動運転に必要なハードウェアはすべて揃っている」と宣言していた経緯がある。その約束が事実上撤回された形だ。

テスラは2026年第4四半期から、監視なしFSDの段階的な展開を開始する予定としている。年末から来年初頭にかけてはソフトウェアアーキテクチャを全面刷新したV15の投入も見込む。ただし、これらの恩恵を受けられるのはHW4以降を搭載した車両に限られる。

中国市場への投入は依然として不透明

テスラは2026年第1四半期の決算報告で、中国市場へのFSD投入を「できるだけ早期に」実現すべく取り組んでいると述べた。同社が中国でのFSD展開に公式に言及するのは、ここ数カ月では珍しい。

振り返れば、マスク氏は2026年1月のダボス会議で「2月にも中国でFSDが承認される見通し」と発言していた。しかし、中国国営メディアの中国日報が政府筋の情報として即座にこれを否定。承認は実現しなかった。

テスラは2025年2月、米国版FSDに近いADAS機能を中国で展開し始めたが、CnEVPostの報道によれば、それ以降めぼしい進展はない。中国当局の承認時期は示されておらず、具体的なロードマップは不明のままだ。

欧州では風穴——オランダが承認

明るい材料もある。テスラは2026年4月、オランダでFSD Supervised(監視付き)の承認を取得した。EU域内で初の承認事例となり、他の加盟国への展開に道を開く可能性がある。

ただし、これはあくまで「監視付き」の承認であり、ドライバーがハンドルから手を離せるレベルではない。完全自律走行へのハードルは、規制面でも技術面でも依然として高い。

HW3問題が映す自動運転競争の構図

HW3の切り捨ては、テスラだけの問題にとどまらない。自動運転技術の進化速度がハードウェアの陳腐化を加速させるという、業界全体の構造的課題を浮き彫りにしている。

中国勢に目を向ければ、XpengはNGP(Navigation Guided Pilot)を武器に都市部での自動運転支援を急速に拡充し、ファーウェイとの提携モデルも市場に浸透しつつある。NIOは自社開発チップ「神玑NX9031」を投入し、ハードとソフトの垂直統合で差別化を図る。いずれもOTA(無線アップデート)による継続的な機能向上を前提としたアーキテクチャを採用しており、ハードウェア世代の断絶リスクをどう管理するかは各社共通の課題となっている。

日本ではホンダが2026年からレベル3搭載車の販売を本格化させる方針を示しているほか、トヨタも次世代BEVに高度運転支援を統合する計画を進める。テスラのFSDは日本未導入のまま時間が経過しており、仮に将来導入されるとしても、HW3搭載の既存テスラオーナーが恩恵を受けられるかは不透明だ。

FSD V15でアーキテクチャが全面刷新されれば、テスラの自動運転技術は新たな段階に入る。だが、その進化の代償として旧世代ユーザーが置き去りにされる現実は、「ソフトウェアで進化し続けるクルマ」という理想の脆さも同時に示している。

出典

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BLADE NOTE編集部
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