NIOの3ブランド戦略 – Onvo・Firefly・本体の棲み分けと海外展開の行方
北京モーターショー2026で、NIO(蔚来汽車)が初めて3ブランドを同一ブースに並べた。NIO本体、大衆向けのOnvo(楽道)、小型車ブランドのFirefly(萤火虫)——計11モデル。プレミアム専業だった同社が「マルチブランド・グループ」へと移行した事実を、来場者の目に焼き付ける展示だった。
ただし、マルチブランド戦略の成否は展示の華やかさでは測れない。中国の新興EVメーカーでこの戦略を先行させたジーリーグループは、Volvo・Polestar・Zeekr・Lotusと4ブランド以上を抱えるが、ブランド間の価格帯の重複やディーラー網の混乱が繰り返し指摘されてきた。NIOが同じ轍を踏まずに済むかは、各ブランドの役割分担がどこまで明確に機能するかにかかっている。
高価格帯のNIO本体とボリュームゾーンのOnvo
NIOは今回、第3世代ES8の特別仕様車「Mirrorblack Edition」を発表した。バッテリー込みで45万6,800元(約66,820ドル)から。通常モデルより5万元、率にして12.3%高い。5層メタルクロム仕上げの「極夜ブラック」外装で、パーソナライズ志向のユーザーを狙う。
BaaS(Battery as a Service)プランなら車両価格は34万8,800元に下がり、102kWhバッテリーの月額レンタル料は1,128元。第3世代ES8は2025年9月の発売から7カ月で累計10万台を突破しており、この商業的成功がNIOの財務を大きく改善させた。2025年第4四半期には創業以来初の四半期黒字を達成している。
一方のOnvoは20万元台で台数を稼ぐ役割を担う。創業者の李斌(ウィリアム・リー)氏は、5月・6月の納車成長を支える2本柱としてOnvo L80と次期フラッグシップSUV「ES9」を挙げた。4月28日デビュー予定のOnvo L80は5人乗りSUVで、既に販売中のL90の5シート版に相当する。L90は4月21日に2026年モデルが発売されたばかりで、6人乗り・7人乗り構成と26万5,800元からの価格は据え置きだ。
NIO本体が40万〜50万元超で利益率を確保し、Onvoが20万元台で台数を伸ばす。この構図自体はトヨタとレクサスの関係に近いが、決定的に異なる点がある。NIOの3ブランドはバッテリー交換ステーションを共用できる設計になっていることだ。トヨタ/レクサスが販売網やサプライチェーンを共有するのと同様に、NIOはバッテリー交換インフラという固定費の重い資産を複数ブランドで分担することで、1台あたりのインフラコストを引き下げようとしている。現在中国国内に3,000基超、欧州に数十基のステーションを展開しており、ブランド数が増えるほど稼働率が上がる仕組みだ。
Fireflyと欧州・アジア展開
3ブランド目のFireflyは小型車に特化する。NIOが高級セダン・SUV、Onvoがファミリー向け中型SUV、Fireflyがコンパクトカー。セグメントの重複を避ける構図は整っている。
Fireflyが特に意識するのは欧州市場だ。小型車の需要が根強い欧州では、NIO本体の大型プレミアムモデルより受け入れられやすい。NIOは既にノルウェー、ドイツ、オランダなどで事業を展開し、バッテリー交換ステーションの設置も進めている。Fireflyがこのインフラに乗れば、新ブランド単独で充電網を構築する必要がなくなる。ジーリーがPolestarとZeekrでそれぞれ別の販売・サービス網を立ち上げたコスト負担を考えると、NIOのインフラ共用モデルは合理的だ。
日本についてはどうか。NIOは現時点で日本市場への参入計画を公表していない。しかし、Fireflyのような小型EVは軽自動車・コンパクトカー中心の日本市場との親和性が高い。トヨタがレクサスとの2ブランド体制を長年運用し、日産もインフィニティとの棲み分けに苦心してきた経験を踏まえると、新興メーカーが3ブランドを同時に海外展開する難度は相当なものだ。仮にNIOがアジア市場に進出する場合、全ブランド一括ではなく、Fireflyのような市場特性に合った1ブランドから始めるのが現実的な選択肢になるだろう。
2026年後半の焦点
NIOは2025年に約22万台を販売した。BYDの年間数百万台規模には遠く及ばない。3ブランドを同時に育てるには、開発リソースの分散とマーケティングコストの増大を吸収するだけの販売規模が必要になる。李斌氏自身が「第2四半期の業界逆風を乗り切る」ために新製品の集中投入を掲げていることからも、足元の市場環境は厳しい。
ES8 Mirrorblack Editionで利益を確保しつつ、OnvoとFireflyで台数を積み上げる。NIOが2026年の販売目標として掲げる35万台を達成できるかどうかが、この戦略の実効性を測る最初の指標になる。Onvo L80のプレセールスは4月28日開始。ES9の詳細はまだ公表されていない。
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