CATL「10分で10→80%充電」の技術戦略 – BYD 1500kW超急速充電との競争激化
10分以内にバッテリー残量10%から80%まで——。中国の電池最大手CATLが、この水準の超急速充電技術の実用化に向けて動き出した。
CATLとSGMWが戦略提携、10分充電の共同開発へ
CnEVPostによると、CATLとSAIC-GM-Wuling(SGMW、上汽通用五菱)は2025年4月、福建省寧徳市のCATL本社で戦略提携契約を締結した。世界シェア約37%を握るCATLと、年間NEV販売台数が70万台を超えるSGMWの組み合わせは、規模の面で業界に与えるインパクトが大きい。両社の協業関係は約10年に及ぶが、今回の提携では超急速充電技術とバッテリー交換事業の2本柱で協力を深める。
提携の柱となるのが、10%→80%を10分未満で完了する急速充電ソリューションの共同開発だ。現行の800Vアーキテクチャ搭載車でも10→80%充電に18〜25分かかるため、10分未満は現行最速と比べても半分以下の充電時間となる。
この充電速度を実現するには、セル側の課題が大きい。リチウムイオン電池で充電速度を上げると、負極表面にリチウムが金属として析出する「リチウムプレーティング」が起こりやすくなる。セルの劣化を早めるだけでなく、最悪の場合は内部短絡につながる。5C(12分で満充電相当)を超える充電レートでは、負極材料の改良や電解液の最適化、さらに精密な温度管理が不可欠になる。
バッテリー交換との「二刀流」戦略
CATLは超急速充電と並行して、バッテリー交換(スワップ)ネットワークの拡大も進めている。2025年末までに中国全土で3,000カ所以上のスワップステーション建設を計画中だ。
SGMWの五菱ブランド複数車種には、CATLの乗用車向けバッテリー交換技術「Choco-SEB(チョコスワップ)」が採用される。スワップ用バッテリーは42kWhから56kWhまでの容量を用意し、小型EVからA・Bセグメントの乗用車、商用物流車まで幅広く対応する設計だ。Chocoスワップブロック1基で約200kmの走行が可能で、ユーザーは実際の使用距離に応じて1基または複数基を選択できる。
NIOが先行するバッテリー交換方式は、約3分で満充電状態のバッテリーに交換できるため「充電待ち時間ゼロ」を実現している。CATLはバッテリーメーカーの立場からスワップ事業に参入し、特定メーカーに依存しない汎用プラットフォームを構築する。SGMWの15車種以上のNEVラインナップが順次CATLのスワップネットワークに統合される予定で、対応車種の規模感はNIOの約10車種を上回る。
BYDは1,500kW充電器を投入、インフラ競争が激化
CATLが充電技術の開発を急ぐ背景には、競合BYDの攻勢がある。BYDは2025年3月、単銃出力1,500kWという世界最高出力の量産型フラッシュチャージャーを発表した。第1世代比で50%の出力増強を果たし、1基あたり1日最大50台の充電に対応する。
BYDはこの超高出力充電器を年内に中国全土で2万カ所に設置する計画を掲げ、さらに海外展開にも着手する方針だ。車両メーカーとして自社EVとの最適化が図れるBYDに対し、CATLは電池メーカーとして複数の自動車メーカーと組む「水平展開型」のアプローチで対抗する構図になっている。
| 項目 | CATL(SGMW提携) | BYDフラッシュチャージャー |
|---|---|---|
| 充電目標 | 10→80%を10分未満 | 単銃最大1,500kW出力 |
| インフラ計画 | スワップ3,000カ所(2025年末) | 充電2万カ所(2025年末) |
| 対応車種 | SGMW 15車種以上+他社展開 | BYD自社車両中心 |
| 海外展開 | SGMWと共同で海外探索 | 海外市場への展開を明言 |
日本の充電環境との格差と今後の展開
中国で進む超急速充電競争は、日本の充電インフラの現状との差を浮き彫りにしている。日本の急速充電器は出力50kW〜90kWが主流で、CHAdeMO 3.0規格では最大400kW対応を謳うものの、実際に150kWを超える充電器の設置はまだ限定的だ。
10分充電を実現するには、セル技術だけでなく受電設備側の大容量化、配電網の増強、そして熱管理システムの高度化が求められる。CATLがバッテリー交換と超急速充電の「二刀流」で攻めるのは、充電インフラの整備が追いつかない地域でもスワップで補完できるという現実的な判断に基づく。既存の電力インフラ制約が大きい市場では、充電方式を単一に絞るより、スワップとの併用でカバー範囲を広げる戦略が合理的だ。
CATLとSGMWは国内市場での充電ネットワーク協力を深めるだけでなく、海外での事業拡大も共同で模索するとしている。BYDの海外充電インフラ展開と合わせ、両陣営とも2025年末のインフラ設置目標——CATLのスワップ3,000カ所とBYDの充電器2万カ所——の達成状況が、この競争の行方を左右する最初の指標となる。
出典
- CATL, Wuling partner on under-10-minute EV fast charging(CnEVPost、2025年4月14日)
- SNE Research「2024年グローバルEVバッテリー出荷量ランキング」(CATLの世界シェア参照)
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