Denza欧州進出が示すBYDマルチブランド戦略 – 日本上陸の可能性は
5分で10%から70%まで充電——。BYDのプレミアムブランド「Denza(騰勢)」が、フラッシュチャージング技術を引っ提げて欧州市場に本格参入する。パリで披露されたZ9 GTを皮切りに、2026年末までに欧州30カ国以上への展開を計画。BYDは単なる車両輸出にとどまらず、充電インフラごと市場を押さえにかかっている。
Denza、欧州で「ブランドごと」展開する狙い
Denzaの欧州投入ラインナップは、グランドツーリングセダンのZ9 GTと7人乗りプレミアムMPVのD9の2車種。D9は中国国内で高級新エネルギーMPVの販売上位に定着しており、欧州でも同セグメントに投入される。
展開の規模感が際立つ。2026年末までに150以上の販売拠点を欧州各地に設ける計画で、これは限定的なテスト販売ではなくブランド単位の本格進出を意味する。フランス、ドイツ、イタリア、スペインなど主要市場にはすでにZ9 GTがリスティングされている。
Denzaはかつてメルセデス・ベンツとの合弁ブランドだったが、現在はBYDの完全子会社。テクノロジー志向のプレミアムブランドとして、欧州の既存高級車メーカーに正面から挑む位置づけだ。
Z9 GTの欧州価格は約11万5,000ユーロ(約12万5,000ドル)。エントリーレベルのポルシェ・タイカンとほぼ同水準に設定された。
| 項目 | Z9 GT(BEV) | Z9 GT(PHEV) |
|---|---|---|
| 航続距離 | 最大1,036km(CLTC) | EV走行401km(CLTC) |
| パワートレイン | シングルモーター370kW/トリモーター計850kW | — |
| 急速充電(10→70%) | 約5分 | — |
| 極寒時充電(−30℃) | 約12分 | — |
第2世代ブレードバッテリー、YunNian-Aサスペンション、「God’s Eye 5.0」運転支援システムを搭載する。10%から97%まで約9分という充電性能は、ガソリン車の給油時間に近づくレベル。−30℃の極寒環境でも12分程度で充電できるとされ、北欧市場を強く意識した仕様になっている。
海外6,000基のフラッシュチャージャー、日本の充電規格との接点
BYDは海外に6,000基のフラッシュチャージングステーションを設置する計画を発表した。うち3,000基が欧州に配置される。中国国内ではすでにフラッシュチャージングネットワークの展開が急ピッチで進んでおり、CarNewsChinaの報道によれば、開始からわずか27日間で297都市・5,000基が稼働に至った。
この動きは中国EVメーカー全体のトレンドでもある。車両の輸出だけでなく、充電インフラへの投資をセットで行うことで、ユーザー体験を自社でコントロールする。テスラがスーパーチャージャーネットワークで先行したモデルを、BYDは急速充電性能という技術的優位性を軸に再現しようとしている。
日本市場との関連でいえば、国内の急速充電規格はCHAdeMOが主流だが、BYDのフラッシュチャージング技術は独自規格に基づいている。日本展開時にはCHAdeMOとの互換性確保、あるいはe-Mobility Powerなど既存の充電事業者との連携が技術面でのハードルになる。欧州ではCCS2規格への対応で参入障壁を下げたが、日本では異なるアプローチが求められる。
日本にDenzaは来るのか——マルチブランド戦略の行方
BYDは現在、日本市場ではATTO 3、DOLPHIN、SEAL、SEALION 7に加え、2025年秋に投入した戦略車種RACCOの5車種を展開している。販売台数は2024年に約3,500台と前年比75%増で推移しており、約100店舗の販売網も整いつつある。
ただし、これらはすべて「BYD」ブランドでの展開だ。Denzaのような上位ブランドを日本に持ち込むかどうかは、現時点で公式な言及がない。
欧州でのDenza展開を見ると、BYDは「量販はBYDブランド、プレミアムはDenza」という二層構造を海外でも敷こうとしている。トヨタとレクサス、日産とインフィニティの関係に近い。Z9 GTの価格帯(約11万5,000ユーロ)は日本円で約1,800万円前後に相当し、レクサスやメルセデスのEVと直接競合するポジションだ。
日本市場でBYDがまず取り組むべきはRACCOによる販売台数の底上げであり、Denza投入はその先のステップになる。欧州30カ国・150拠点という展開が軌道に乗り、かつ日本向けの充電規格対応が整えば、右ハンドル市場への展開は2027年以降に具体化する可能性がある。BYDブランド単体で年間1万台規模の販売基盤を築けるかどうかが、プレミアムブランド投入の前提条件になるだろう。
出典
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