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NIO李斌が提唱するバッテリー規格統一 – EV業界1000億元のムダは解消できるか

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中国EV: NIO李斌が提唱するバッテリー規格統一 – EV業界1000億元のムダは解消できるか
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バッテリーセルの規格を4〜5種類に絞れば、中国EV産業全体で1000億元(約1.46兆円)超のコスト削減余地が生まれる——NIO創業者の李斌(ウィリアム・リー)CEOが、業界に突きつけた数字だ。

「パルス型需要」が生む構造的なムダ

李斌は4月12日、中国EV百人会フォーラムで講演し、スマートEVの製品サイクルが極端に短くなっている現状に警鐘を鳴らした。「どの新型車も、丸1年ヒットを維持できない」と断じ、メーカーが巨額投資で生産能力を立ち上げた頃には消費者の関心が次のモデルに移っている実態を指摘した。

結果として、1車種あたり数億元規模の投資が無駄になるケースも珍しくない。メーカー、サプライヤー、ユーザーの三者すべてが損をする「パルス型需要」の構造だ。李斌はこの悪循環を断ち切る鍵として、車両原価の50%超を占めるコア部品——バッテリーセルと半導体チップの規格統一を提唱した。

バッテリーセルは「4〜5種類」に収束可能

現在、中国市場では各メーカーが独自仕様のバッテリーセルを採用しており、セルの種類が乱立している。李斌は「統一された電池セル規格がないことが、コスト・効率・市場対応力・長期的な産業競争力を制約する深刻な問題になっている」と語った。

技術的にはバッテリーのフォーマットは収斂が進んでおり、業界全体での標準化は十分に実現可能だという認識だ。中国国内市場で4〜5種類の標準セルに統一できれば、特定車種の販売変動によるサプライチェーン全体の供給リスクを吸収でき、稼働率の平準化にもつながる。

NIO自身はバッテリー交換(スワップ)方式を採用しており、全国2,700カ所以上のステーションを運用する。交換式では物理的にバッテリーパックの互換性が必要になるため、規格統一の恩恵を最も直接的に受ける立場にある。さらに、NIOのBaaS(Battery as a Service)モデルでは月額課金でバッテリーを提供しているため、標準セルの採用でパック調達コストが下がれば、BaaSの利益率が直接改善する。李斌の提言は業界全体の効率化を訴えつつ、自社の収益構造を強化する布石でもある。

半導体チップも「1000種→400種」へ

バッテリーだけではない。李斌はチップの多品種化がコストを押し上げている問題にも切り込んだ。具体例として挙げたのが、NIOの新型フラッグシップSUV「ES9」だ。1台に搭載される半導体は1,000種類以上、チップ総数は4,000個を超える。NIOは社内でチップの種類を約400に削減する取り組みを進めており、さらに業界共通のチップ規格と相互互換基準の策定を呼びかけた。

車載半導体は近年の供給不足を経て各社が囲い込みに走った経緯があるが、品種を絞ることで調達の柔軟性と交渉力が増す。自動車用半導体を手がけるサプライヤーにとっては、少品種大量生産へのシフトが求められることになる。

この提言の背景には、NIO自身の業績改善もある。同社は2024年第4四半期に創業以来初の四半期黒字を達成し、調整後営業利益(Non-GAAP)は12.5億元に達した。赤字体質からの脱却が、サプライチェーン改革を語る立場としての信頼性を支えている。

標準化で変わる日本部品メーカーの参入条件

中国EV市場でバッテリーセルの標準化が進めば、セル単体での差別化は難しくなる。日本勢が強みを持つセラミックコンデンサやパワー半導体などの電子部品も、中国側が互換規格を主導した場合、仕様のすり合わせではなく規格適合がビジネスの前提条件に変わる。TDKや村田製作所といった電子部品大手は、従来の系列取引に頼らず、標準セル向け部材で中国市場に直接アクセスするルートが開ける。量産スケールを活かせる企業にとっては、むしろ商機が広がる構図だ。

実現へのハードル

NIOは4月9日にES9の先行予約を開始しており、5月に正式発表、6月1日から納車を開始する予定だ。フラッグシップSUVの投入と業界全体の効率化提言を同時に打ち出すことで、プレミアムEVメーカーとしてのポジションを固める狙いが透ける。

もっとも、規格統一は総論賛成・各論反対に陥りやすいテーマだ。CATLやBYDなど、独自のセル技術で競争優位を築いてきた企業が、自社仕様を捨てて標準規格に歩み寄るインセンティブは薄い。現実的には、NIOのスワップ網に参画するメーカーが増える形で「事実上の標準」がじわじわ広がるシナリオが、トップダウンの規格策定より先に進む可能性が高い。李斌の提言は、その地ならしとして読むのが妥当だろう。

出典

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BLADE NOTE編集部
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