バッテリー技術

全固体電池500Wh/kg – ブレードバッテリーとの差と量産の壁

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バッテリー技術: 全固体電池500Wh/kg – ブレードバッテリーとの差と量産の壁
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エネルギー密度500Wh/kg——現行のリン酸鉄リチウム(LFP)電池の約3倍にあたる数字だ。GAC(広汽集団)傘下のバッテリーメーカー、Greater Bay Technology(巨湾技研)が2026年4月14日に発表したAサンプル全固体電池セルが、この数値を掲げている。同社はGWh規模の量産を2026年中に開始し、車両搭載まで進める計画を示した。

複合電解質という「第5のルート」

全固体電池の開発では、硫化物系・酸化物系・ポリマー系・ハロゲン化物系の4つの技術ルートが主流とされてきた。いずれもイオン伝導率の低さ、界面抵抗の高さ、製造プロセスの複雑さといった共通の壁を抱えている。

Greater Bayが選んだのは、これらとは異なる複合電解質ルートだ。CarNewsChinaの報道によると、同社は「SDE硬化深共晶+CFSアンチペロブスカイト+低次元ネマティックナノ閉じ込め」を組み合わせた有機・無機複合固体電解質システムを独自開発。高いイオン伝導率と構造安定性を両立させたという。この技術は中国国家発展改革委員会の評価を経て、国家重大プロジェクトの支援を受けている。

Aサンプルセルの実力——数値で見る

今回ラインオフしたAサンプルセルは、液体電解質を一切含まない完全固体型だ。釘刺し・圧壊・熱衝撃の各試験で「不燃・不爆」の結果を達成したとCnEVPostは伝えている。従来のリチウムイオン電池で最大のリスクとされる熱暴走を、設計レベルで排除した格好になる。

充電性能は2C〜3Cの安定急速充電に対応。全固体電池は充電速度の遅さが商用化のボトルネックとされてきたが、Greater Bayはこの点を克服したと主張する。サイクル寿命も現行液系リチウムイオン電池と同等水準を維持しているという。

では、BYDの主力であるブレードバッテリーと比較するとどうか。

項目 BYD ブレードバッテリー(LFP) Greater Bay 全固体(公称値)
エネルギー密度 160〜180Wh/kg 260〜500Wh/kg
安全性試験 釘刺し試験クリア(発火なし) 釘刺し・圧壊・熱衝撃クリア
急速充電 1C〜1.5C程度 2C〜3C
電解質 液体 複合固体(液体フリー)
量産実績 大規模量産済み Aサンプル段階

数値上の差は歴然だ。エネルギー密度の上限値500Wh/kgが実現すれば、同じ重量のバッテリーパックで航続距離を2.5倍以上に伸ばせる計算になる。車体の軽量化や設計自由度の向上にも直結する。

「Aサンプル」と量産の間に横たわるもの

ただし、冷静に見る必要がある。Aサンプルとは実験室レベルの初期試作品であり、基本設計の検証と材料の実現可能性を確認する段階にすぎない。ここから量産に至るまでには、Bサンプル(設計最適化)、Cサンプル(量産プロセス検証)と複数のステージが控えている。

Greater Bayは広州市南沙区の製造拠点でパイロット規模から量産規模への移行条件を満たしたとしており、電解質材料やセル製造に関する特許を50件以上出願済みだ。生産歩留まりと品質の一貫性は「自動車グレード基準に到達」と説明している。

一方、CarNewsChinaの編集部は記事中で注目すべき補足をしている。GAC傘下の全固体電池量産ラインは2027〜2030年の量産を計画しているとの報道が先月あったばかりで、中国のトップEV専門家は全固体電池の広範な普及には「まだ数年かかる」との見解を示していた。Greater Bayが掲げる「2026年中にGWh量産・車両搭載」という目標は、これらの見通しと比べてかなり強気だ。

260Wh/kgと500Wh/kgの落差

公称エネルギー密度の幅が260〜500Wh/kgと広い点も気になる。260Wh/kgなら現行のハイニッケルNMC電池(250〜300Wh/kg)と大差なく、全固体に切り替えるコストメリットが出にくい。500Wh/kgが実現できれば確かにゲームチェンジだが、その場合の量産コストや歩留まりについて具体的な数値は開示されていない。

全固体電池の商用化を巡っては、トヨタが2027〜28年、日産が2028年をそれぞれ目標に掲げている。Greater Bayの2026年という時間軸は業界最速の部類に入るが、中国自動車動力電池産業イノベーション連盟(CABIA)のデータによると、同社の2026年3月時点での中国市場における電池搭載量は0.21GWhで市場シェア0.37%、ランキング15位。CATLやBYDとは規模が大きく異なるプレイヤーだ。

全固体電池の技術競争は2026〜2027年が最初の商用化ウィンドウとされ、まさに今がその入り口にある。Greater Bayの複合電解質ルートが量産で実力を証明できるか、最初の試金石は年内に訪れる。

出典

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BLADE NOTE編集部
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