EV市場

中国NEV浸透率「2030年に70%超」元工信部副部長が示した強気予測とガバナンスの壁

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EV市場: 中国NEV浸透率「2030年に70%超」元工信部副部長が示した強気予測とガバナンスの壁
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2030年までにNEV(新エネルギー車)の市場浸透率が70%を超える——。中国工業情報化部(工信部)の元副部長・蘇波氏がこの見通しを示した。同時に同氏は、NEV産業の発展にはなお課題が残り、ガバナンス体制の整備が急務だとも指摘している。楽観と警鐘を同じ場で発したかたちだ。

浸透率70%——数字が示す中国市場の勢い

蘇波氏が言及した「2030年に70%超」という数字は、中国NEV市場の急拡大を端的に表している。2024年時点で中国のNEV浸透率はすでに40%を超え、月によっては50%を超える水準に達した。BYDを筆頭に、NIO、Xpeng、Zeekr、Li Autoといった新興勢が販売台数を積み上げ、GeelyやCheryなど伝統メーカーもBEV・PHEVのラインナップを急拡大している。

70%という水準は、ガソリン車とNEVの主従が完全に逆転する世界を意味する。仮に2030年の中国新車販売が年間3,000万台規模で推移すれば、2,100万台以上がNEVになる計算だ。部品サプライチェーン、充電・バッテリー交換インフラ、電力供給——影響の及ぶ範囲は広い。

蘇波氏が突きつけた「課題」の中身

蘇波氏が強気の数字を示したのと同じ場で、治理体系(ガバナンス体制)の整備が急務だと強調した点は見逃せない。2本の36Kr速報は、同一人物による同一イベントでの発言をそれぞれ「浸透率70%予測」と「ガバナンス課題」に分けて報じている。つまり蘇波氏は、成長の確信と制度の未整備を意図的に対置させた。

具体的な項目への踏み込んだ言及は限定的だったが、業界で繰り返し指摘されている構造的問題は明確だ。

  • 過当競争:中国には100社を超えるNEVブランドが乱立し、2024年だけでも複数のスタートアップが経営危機に陥った。補助金縮小後の淘汰圧力は今後さらに強まる。
  • 利益率の低さ:BYDやLi Autoなど一部を除き、多くのNEVメーカーは赤字体質から脱却できていない。販売台数の拡大が利益に直結しない構図が続く。
  • 海外展開の逆風:EUの追加関税、米国の規制強化、東南アジアでの現地生産義務化など、国内浸透率が高まるほど成長余地を海外に求めざるを得ないが、その道は平坦ではない。

これらは個別の課題であると同時に、蘇波氏が「ガバナンス」という言葉で括った問題群でもある。元副部長という立場でこのタイミングに発言した背景には、淘汰局面を前にした政策的な地ならしの意図も読み取れる。

トヨタ・ホンダの中国BEV戦略は間に合うか

中国市場でのシェア低下が続く日系メーカーにとって、NEV浸透率70%の市場は正面から向き合わざるを得ない現実だ。日系メーカーの中国販売に占めるNEV比率は2024年時点でまだ1割前後にとどまり、市場全体の40%超とは大きな開きがある。

トヨタは2026年までに中国向けBEV専用モデルを複数投入する計画を打ち出し、ホンダも「烨(Ye)」シリーズで巻き返しを図る。ただし、両社のBEVは価格帯が20万〜30万元の中間層を狙うのに対し、BYDは秦PLUSの7万元台からハイエンドの仰望U8まで全価格帯を押さえている。日系が得意とするHEV技術をPHEVへの橋渡しに使い、段階的にBEVへ移行する戦略は理にかなっているが、中国の消費者がその移行を待ってくれるかは別の問題だ。年間400万台超を売るBYDの製品サイクルの速さに、日系の開発スピードが追いつけるかが勝負の分かれ目になる。

成長とガバナンスのジレンマ

蘇波氏の言葉を借りれば、成長の速度にガバナンスが追いつかなければ、70%という数字は達成できても産業としての足腰は脆いままだ。中国政府がどのタイミングで、どの程度の規制強化に踏み切るかが焦点になる。

直近では、2025年に入りNEV向け補助金がさらに縮小される一方、工信部は安全基準やデータ管理に関する新規制の策定を進めている。過当競争の整理を市場原理に任せるのか、行政指導で加速させるのか——蘇波氏が成長予測とガバナンスの警鐘を同時に発した背景には、この政策判断が間近に迫っているという認識がある。淘汰が進む2025年後半から2026年にかけて、中国NEV産業の「量から質へ」の転換が本格的に試される局面に入る。

出典

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BLADE NOTE編集部
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