商用EV参入が加速 – 中小運送業者がEV導入に必要な3つの条件
道路貨物運送業の倒産件数がリーマン・ショック以来の水準に迫る中、商用EVという選択肢が現実味を帯びてきた。AIストームは、新エネルギー商用車のファブレスメーカー・ZO MOTORSとの代理店契約を締結。自社工場を持たず製造を外部委託することで車両価格を抑え、中小事業者でも手が届く価格帯を狙う。では、中小運送業者がディーゼルトラックからEVへ実際に切り替えるには何が必要か。現場の課題から3つの条件を整理する。
1. 車両価格の大幅な引き下げ
現状、商用EVの車両価格はディーゼル車の1.5〜2倍だ。たとえば三菱ミニキャブ・ミーブの車両本体価格は約243万円〜、ガソリン仕様のミニキャブバンは約104万円〜。国のCEV補助金や自治体の上乗せ補助を活用しても、差額は小さくない。
ZO MOTORSのファブレス方式は、この価格差を圧縮する一手になる。工場への設備投資が不要な分、車両価格に反映できるからだ。加えて、リースやサブスクリプションモデルが広がれば状況は変わる。月々の支払いに燃料費削減分を組み込めば、キャッシュフロー上はディーゼル車と同等に持ち込める。初期投資のハードルは、ビジネスモデル次第で下げられる。
2. 充電インフラの「事業者目線」での整備
日本国内の急速充電器は約1万基、普通充電器は約3万基(GoGoEV調べ)。数は増えているが、商用利用を前提とした設計にはなっていない。
乗用車向けの公共充電スポットは、商用車にとって使い勝手が悪い。必要なのは、事業所の駐車場で夜間に複数台を同時充電できる環境だ。物流デポへの充電設備設置に補助制度は存在するが、手続きが煩雑で中小事業者には重荷になっている。電力契約の見直しやデマンドコントロールまで含めた、事業者向けパッケージの設計が急がれる。
都市部の短距離配送、いわゆる「ラストワンマイル」であれば、1日の走行距離は100km前後。夜間にデポで充電すれば日中の業務に支障は出ない。充電インフラの課題は、まず短距離配送から解決できる。
3. 車両ラインナップの拡充
ラストワンマイル配送に使われる車両は、軽バンから2トン車まで幅広い。しかし、日本市場で選べる商用EVは限られている。三菱ミニキャブ・ミーブ(航続距離約150km)、日産クリッパーEV——軽商用クラスに数車種あるものの、1トン〜2トンクラスの選択肢はほぼ空白だ。
用途に合った車両がなければ、導入したくてもできない。ZO MOTORSのような新興メーカーの参入は、この空白を埋める動きとして注目に値する。ただし、ファブレスメーカーの品質管理やアフターサービス体制には未知数が残る。車両トラブルが即配送遅延につながる運送業では、信頼性の担保が欠かせない。AIストームとの提携が、販売だけでなく保守・サポートまでカバーする体制になるかどうか。ここが中小事業者の判断を左右する。
コスト削減と環境対応、二重の圧力が後押し
国土交通省の試算によれば、2030年には営業用トラックの輸送能力が34%不足する。ドライバー不足に燃料費の高止まりが重なり、中小運送業者の経営は綱渡りだ。
一方で、荷主企業がScope3排出量の開示を求められる流れの中、環境対応は「コスト」から「受注条件」に変わりつつある。エンジン車より構造が単純なEVは、オイル交換やベルト類の整備が不要。ブレーキパッドの摩耗も回生ブレーキで抑えられる。燃料費の変動リスクからも解放される。
商用EVは「環境にいい」だけの話ではない。燃料費・維持費・人材確保——複合的な経営課題に対する現実解になりつつある。短距離配送の領域では、EVのメリットがデメリットを上回る局面はすでに近い。3つの条件がどこまで整うか。その速度が、中小運送業のEVシフトを左右する。
出典
- AIストーム、新エネルギー商用車のファブレスメーカーZO MOTORSと代理店契約を締結(Response)
- 物流の2024年問題について(国土交通省)
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