Li Auto vs 東風日産、EREV市場の競争が中傷告発に発展
中国のEV市場で、異例の舌戦が勃発した。Li Auto(理想汽車)の創業者・李想CEOが、SNS上で「日本ブランド」による組織的なネット中傷を告発。名指しこそ避けたものの、矛先は東風日産に向けられている。
李想CEOの告発——「大量のアカウントで虚偽情報を拡散」
4月12日(土)、李想氏は自身のWeChat上で2件の投稿を行い、「ある日本ブランド」がネット上の工作員を大量に雇い、Li Auto製品に対する悪意ある中傷を展開していると訴えた。大量のSNSアカウントを使って虚偽の情報を捏造し、Li Auto製品のコメント欄を埋め尽くすことで、通常の事業運営を妨害しているという。
李想氏は直接的な名指しを控えたが、WeChat投稿のスクリーンショットが広く拡散され、批判の対象が東風日産であることは業界内で周知の事実となった。CnEVPostの報道によれば、Li Autoの法務部門は同日、Weibo上で証拠収集が完了したと発表し、公安当局への通報と法的責任追及の方針を示している。
東風日産NX8の投入——EREVでLi Autoに挑む
この騒動の直接的な引き金は、東風日産が4月9日に発売した新型SUV「NX8」だ。同社初のEREV(レンジエクステンダーEV)オプションを備えたモデルで、中国市場への本格的なてこ入れを狙う。価格は14万9,900元(約295万円)からと攻撃的に設定され、発売から30分で大量の受注を獲得した。
発売イベントでは、東風日産の辛宇エグゼクティブが自社の新技術とLi Autoを繰り返し比較した。流出した社内研修資料やPRブリーフィングでは、Li Auto「L6」(EREVモデル、24万9,800元〜)と「i6」(BEVモデル、同価格帯)が明確にベンチマーク競合として設定されていた。
東風日産NEVブランドの王騫ゼネラルマネージャーはWeibo上で公式回答を出し、「業界ルールを厳守し、健全な競争を提唱してきた」「Li Autoを含むすべての同業者を尊重する」と沈静化を図っている。
利益率4.1%の消耗戦——過当競争の構造的背景
この応酬は、中国NEV市場が増分拡大のフェーズから、限られたパイを奪い合うゼロサムゲームに移行したことを映し出している。中国乗用車協会(CPCA)のデータによれば、中国自動車産業全体の利益率は2025年に4.1%まで低下し、2015年以降の最低水準を記録した。
背景には、EREV市場そのものの競争激化がある。Li Autoは2025年に約50万台を販売し、同セグメントで圧倒的なシェアを握るが、BYDが「DM-i」技術でプラグインハイブリッド領域を拡大し、HuaweiもAITOブランドの問界M7・M9シリーズで急追している。さらにGeely傘下のLeapmotorやChanganのDeepblueブランドもEREV投入を加速しており、かつてLi Autoがほぼ独占していた市場は多極化の様相を呈している。
こうした過当競争に対し、中国当局は2025年から自動車セクターの「過度な競争」を取り締まる特別キャンペーンを展開中だ。価格戦争にとどまらず、ネット上の中傷合戦やネガティブキャンペーンにまで規制の目が向けられる可能性がある。
日産NX8、価格攻勢の先にある訴訟リスク
日産にとって中国市場は長年の収益源だったが、NEVシフトのなかで販売は大幅に減少している。2024年の日産の中国販売台数は約62万台と、ピーク時(2018年の約156万台)の4割程度にまで落ち込んだ。トヨタやホンダも中国販売を減らしているが、両社はbZシリーズやe:Nシリーズといった専用BEVの投入で対応している。日産がEREVという異なるアプローチを選んだのは、Li Autoが切り開いた「大型SUV×レンジエクステンダー」という需要に直接参入する判断だ。
価格で半額近いNX8がどこまでLi Autoのシェアを削れるかは未知数だ。ただし、発売直後にネット中傷の告発騒動に巻き込まれたことで、NX8の製品評価とは別次元の問題が浮上した。仮に訴訟に発展すれば、東風日産のブランドイメージへの打撃は避けられない。製品の競争力以前に、中国市場特有のマーケティング慣行への対応力が問われる事態になっている。
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