テスラの電池調達先が5社に拡大 – 欣旺達が切り開く中国バッテリー勢力図の変化
CATL、パナソニック、LGエナジーソリューション、BYD——そしていま、欣旺達(Sunwoda)。テスラのグローバル電池サプライチェーンに5社目のサプライヤーが加わった。中国メディア36Krが4月9日、複数の業界関係者の証言をもとに独占報道した。
欣旺達参入の背景——テスラが抱える収益構造の課題
動力電池の調達コストは、依然として車両原価の30%超を占める。テスラの2025年通期決算によれば、自動車事業の売上高は695.26億ドルで前年比10%減。規制クレジットを除いた自動車粗利率は15.4%にとどまり、2021年のピーク(27%)から大幅に低下した。
純利益も前年比26.4%減の58.6億ドル。Optimus、Robotaxi、xAIといった将来構想が時価総額を支えているものの、短期的に収益化できる事業は依然として自動車販売が中心だ。電池調達での交渉力強化は、テスラにとって避けて通れない課題になっている。
なぜ欣旺達なのか——「安くて新しい」二線メーカーの戦略
テスラの既存サプライヤーを整理すると、コスト削減の余地が限られている構図が見えてくる。CATLは高粗利戦略を維持しており、大幅な値下げは期待しにくい。パナソニックとLGエナジーソリューションが供給する三元系電池は、素材コストがLFPより構造的に高い。パナソニックの電池事業の粗利率は近年5%前後で推移しており、ここから絞れる余地も小さい。
36Krによると、欣旺達がテスラに供給する電池セルは第3世代LFP(リン酸鉄リチウム)材料を採用し、充電レートは3Cに対応する。中国市場では3C〜5Cの超急速充電が標準化しつつあり、テスラもこの流れを取り込む狙いがある。
注目すべき点は取引モデルだ。テスラは欣旺達からセル(電池セル)のみを購入し、モジュールとパック(電池包)は自社で製造する。CATLからモジュール単位で調達していた従来方式とは異なり、角形電池での新たな試みとなる。セル調達に絞ることで、テスラはモジュール・パックの設計と原価を自社でコントロールできる。
テスラの電池サプライチェーン——5社体制の全体像
| サプライヤー | 電池タイプ | 主な役割 | 供給形態 |
|---|---|---|---|
| CATL | LFP | 入門〜中価格帯モデル | モジュール |
| パナソニック | 三元系(NCA) | 高性能モデル | セル |
| LGエナジーソリューション | 三元系(NMC) | 高性能モデル | セル |
| BYD | LFP(Blade Battery) | 欧州工場向け(進展不明) | — |
| 欣旺達(Sunwoda) | 第3世代LFP(3C対応) | 上海工場→海外輸出モデル | セル |
CnEVPostの報道によれば、BYDは以前テスラの欧州工場に電池を出荷したが、その後明確な進展はない。欣旺達は、CATLに次ぐ中国製LFP電池の「第二の柱」として位置づけられる。
欣旺達にとっての意味——規模獲得への突破口
中国の動力電池市場は寡占が進んでいる。CATLが出荷量ベースで約5割、BYD傘下の弗迪電池(FinDreams Battery)が親会社の年間数百万台の販売に支えられて上位に位置する。中創新航、国軒高科、欣旺達といった二線・三線メーカーの装機量は拮抗しており、大型受注1件が市場シェアの跳躍につながる。
テスラの年間納車台数は2年連続で前年割れとはいえ、約164万台の規模がある。欣旺達にとって、この受注は動力電池事業の転換点になり得る。同社は2024年の売上高が560億元(約82億ドル)に達したものの、売上の過半は消費者向け電池(スマートフォン等)が占め、動力電池事業は依然として10億元規模の赤字を抱えている。昨年7月に香港市場への上場申請を提出しており、テスラとの取引実績はIPOに向けた強力な「製品力の証明」にもなる。
欣旺達の顧客獲得手法は独特だ。36Krによれば、同社は小米(Xiaomi)汽車のオフィス近くに30〜50人規模の専任チームを常駐させ、即時対応できる体制を敷いていたという。理想汽車(Li Auto)とは合弁会社を設立し、理想が設計した電池を欣旺達が受託生産する形態をとっている。価格競争力に加え、主機メーカーの要求に徹底的に寄り添う姿勢が、二線メーカーとしての武器になっている。
電池は浙江省義烏から出荷済み、国内投入は未定
欣旺達製の電池セルは、すでに浙江省義烏の工場から出荷が始まっている。現時点では上海工場で生産される海外輸出向け車両に搭載されており、中国国内向けモデルへの適用時期は決まっていない。業界関係者は36Krに対し、「テスラは通常、新部品の導入に1年弱の観察期間を設ける」と分析しつつ、他の意思決定要因も排除できないとしている。
テスラはメキシコ工場の建設を進めており、年産能力は100万台級と報じられている。二線メーカーの欣旺達は、テスラのグローバル展開に合わせた海外工場建設にも柔軟に対応しやすい。パナソニックがかつてテスラ上海工場の稼働時に現地進出を見送った経緯と対照的だ。
なお、欣旺達は最近、Geely子会社とのバッテリー品質訴訟(請求額最大23.1億元)で和解に至っている。2025年の純利益への影響は5億〜8億元の見込みで、関連するすべての加工済みバッテリーパックは欣旺達に帰属する。財務面のリスク要因として留意が必要だ。
出典
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