第2世代ブレードバッテリーの実力 – 腾勢N8Lのスペックから読み解く急速充電の進化
5分で70%、9分でフル充電——BYDが3月に発表した第2世代ブレードバッテリーと「フラッシュチャージ」技術が、いよいよ量産車に本格搭載され始めた。4月10日、BYDのプレミアムブランド腾勢(Denza)がN8Lフラッシュチャージエディションの予約販売を中国で開始した。価格帯は35万〜40万元(約735万〜840万円相当)。
第2世代ブレードバッテリーで何が変わったのか
BYDが2020年に発表した初代ブレードバッテリーは、LFP(リン酸鉄リチウム)セルを刀片状に並べるCTP構造で安全性と体積効率を両立させた。釘刺し試験をクリアした安全性が売りだったが、急速充電性能ではNMC系に見劣りする場面もあった。
第2世代では充電性能が劇的に引き上げられた。N8Lの公表スペックによると、最大1,500kWの充電電力に対応し、10%から97%までわずか9分。10%から70%なら5分で済む。CarNewsChinaによれば、マイナス30℃の極寒環境でも追加3分程度で充電が完了するという。LFPの弱点とされてきた低温特性にもメスを入れた格好だ。
LFPセルでこの充電速度を実現した点は技術的に大きな意味を持つ。従来、超急速充電はNMC(ニッケル・マンガン・コバルト)系セルの専売特許とされてきた。LFPはイオン拡散速度の制約から高Cレート充電が難しく、5C以上の充電に対応した量産LFPセルは前例がない。BYDは電極構造の改良とセル内部の熱マネジメント最適化によってこの壁を突破したとみられ、コバルトフリーかつ高い安全性を維持したまま超急速充電を可能にしたことになる。
バッテリー容量は75.26kWhで、PHEV(プラグインハイブリッド)ながらEV航続430kmを確保している。PHEVで75kWh超のバッテリーを積む車種は世界的にも珍しく、BYDが「EV並みの電池容量を持つPHEV」という路線を本気で推し進めていることがわかる。
1,500kW充電の意味——インフラ側の課題と競合比較
車両側が1,500kW対応、つまり現行の主流急速充電器(120〜250kW)の6〜12倍に相当するが、実際にこの充電速度を発揮するには対応する充電器が不可欠だ。BYDは自社の超急速充電ネットワーク整備も並行して進めているが、全国的なカバーにはまだ時間がかかる。
とはいえ、車両側の受電能力を先に引き上げておくアプローチは合理的だ。インフラが追いついた段階で即座にフル性能を引き出せる。同様の戦略はZeekrやXPENGも採用しており、Zeekr 007は5C充電対応で10%から80%まで10.5分、XPENG G9は同区間を15分で充電する。N8Lの10%から97%で9分というスペックは、充電範囲がより広いにもかかわらず同等以上の速度であり、LFPセルでこの数値を出している点で差別化が際立つ。中国EV市場の充電速度競争は新たなフェーズに入っている。
N8Lの全体像と腾勢ブランドの攻勢
N8Lフラッシュチャージエディションは全長5,200mm、ホイールベース3,075mmの大型6人乗りSUV。パワートレインはPHEV専用2.0Tエンジン(最大出力152kW)に3モーターを組み合わせ、システム最大出力は560kW(751馬力)。0-100km/h加速は3秒台に収まる。
| 項目 | N8L フラッシュチャージ | N9 フラッシュチャージ |
|---|---|---|
| 予約価格 | 35万〜40万元 | 45万〜50万元 |
| バッテリー容量 | 75.26kWh | 非公開 |
| EV航続 | 430km | 未発表 |
| 充電(10→97%) | 9分 | 9分 |
| 予約開始 | 4月10日 | 4月7日 |
シャシーにはDiSus-Aインテリジェントエアボディコントロールを搭載。路面をセンサーで先読みし、サスペンションの剛性と減衰力をリアルタイムに調整する。先進運転支援「God’s Eye 5.0」は強化学習によるエンドツーエンドモデルを採用し、車内では50インチAR-HUDやDeepSeek統合の音声AIアシスタントが搭載された。
N8Lの予約開始は、4月7日に予約が始まったフラッグシップN9フラッシュチャージエディション(45万〜50万元)に続くもの。CnEVPostはこの連続投入について「BYDが既存モデルを最新技術で継続的にアップデートし、製品競争力を強化している」と指摘する。先月には腾勢D9 MPVの第2世代モデルも予約が始まっており、ブランド全体で第2世代バッテリーへの切り替えを急ピッチで進めている。
日本市場ではBYDがSEALION 7を2025年4月に投入したばかりだが、中国本土ではすでにその先を行く技術が量産段階にある。第2世代ブレードバッテリーとフラッシュチャージがBYDの日本向けラインナップに波及するかは未定だ。日本のCHAdeMO規格は最大出力400kW止まりで、1,500kW対応の恩恵をそのまま受けることは難しい。充電規格の世代差が、日本のEVユーザー体験にどう影響するかが今後の焦点になる。
出典
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